「聡明な女は料理がうまい」 桐島 洋子

すぐれた女性は必ずすぐれた料理人である。
「果敢な決断と実行」の連続である料理について、1937年に生まれた著者が愛情を込めて書き綴るエッセイ。


ブックフェアのアノニマ・スタジオさんのブースでお勧めしてもらって購入しました。
著者は桐島 洋子さん。
1976年に発行された本の復刻版です。

この本で初めて著者のことを知りましたが、調べれば調べるほど自由奔放でおもしろい女性です。
そんな彼女のユーモアと機知に富んだ内容が詰まった1冊で、ここのところ料理に前向きなのは間違いなくこの本の影響です。
冷蔵庫にあるものでささっと料理を作れる女性、心から楽しめるホームパーティを主催できる女性、素敵ですよね。

料理が得意な人であれば、本書に書かれている食材の分量を見ながら料理が作れるのでしょうか。
私はとてもそんなレベルではないものの、美味しそうな料理を頭の片隅にメモして、想像し、自分もまずは何か作ってみようという気にさせられます。
そして注目すべきはこれが単なる料理本ではないところ。料理という軸を通して、世界を駆け抜けた女性の生き様に触れられます。

初めて刊行されてから30年弱経ちますが、ちっとも古臭くなく、色褪せない1冊です。
面倒くさいな、料理とか。なんて思ってしまう時は、この本を読んで背筋を伸ばしたいと思います。

ある欲求を満たすことによって得られる喜びの価値と、その欲求のためにみずからが支払うものの価値とにバランスを維持するのが健康な平衡感覚である。
しかし自分自身が価値を生み出す人でなければ、こういう健康な平衡感覚は持ちえない。 (p132)

★★★★

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「何者」 朝井 リョウ

就活が始まる。
自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。
この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。
影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。第148回 直木賞受賞作。

心が一気に大学時代まで引き戻されて、ざらざらザワザワした気持ちで読み進めました。 続きを読む

「とんび」 重松 清

昭和37年の夏の日、瀬戸内海の小さな町の運送会社に勤める“ヤス”に息子アキラ誕生。
家族に恵まれ幸せの絶頂にいたが、それも長くは続かず……。
高度経済成長に活気づく時代と町を舞台に描く、父と子の感涙の物語。


不器用な親と子の物語。
さまざまな家族の形が登場する中で、家族とは何か語りかけてくれる一冊でした。
旅先に向かう電車の中で読んで涙をぽろぽろ流し、帰りの電車で読んで再び泣いて… これは、外で読んではいけない本でしたね。

泣ける本として名高いのは知っていたのですが、人前で泣くほどではないだろう、と思っていたら甘かった。
親が子を想う気持ちが熱くて、深くて。泣き所が多いです。
親と子って、考えてみればすごい繋がりだよなぁとしみじみ。

昭和が舞台だからか、どこか懐かしい、ノスタルジックな気持ちになりました。
いつか自分が親になった時にもまた読みたい。

大事に思うとる者同士が一緒におったら、それが家族なんじゃ、一緒におらんでも家族なんじゃ。
自分の命に替えても守っちゃる思うとる相手は、みんな、家族じゃ、それでよかろうが。 (P342)

★★★★★

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「配達されたい私たち」 一色 伸幸

32歳、ウツ、妻子あり。
感情は喪失し、毎日を芋虫のように暮らす澤野。
ある日、死に場所として入った廃墟で、届けられず捨てられた7年前の手紙の束を発見する。
.
そうだ、この7通の手紙を届けてから死のう。
心を亡くした男が届ける、心を繋ぐ7通の手紙の物語。


知人に勧められて借りました。
著者がうつ病だったということがあり、鬱の描写がとてもリアル。

感情の喪失や色のない世界、動けない体に、取り纏う希死観念。
体験記ではなく小説でこんな風に鬱独特の症状を描いている作品は希少かもしれないですね。

7年前に届けられるはずだった手紙が時を越えて届くことで様々な物語が生まれますが、共通して思ったのは、タイミングって大きいなということ。
タイミングが違えば結果は違っていた。そういうことは現実にたくさんあって、むしろそういう些細なタイミングのズレや一致で生まれた結果の積み重ねが人生を創っているように感じます。

一般的な「良い」「悪い」という物差しとは別のところで物語が紡がれているのもよかったです。
時を越えて届けられる手紙って、なんだかいいですね。

★★★☆

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「太陽のパスタ、豆のスープ」 宮下 奈都

2年間付き合った彼と、結婚式を前に突然迎えた破局。
傷ついたあすわが出会ったのは、叔母ロッカが提案する「ドリフターズ・リスト(漂流者のリスト)」
それは、やりたいことを書き上げていくリストだった。
絶望の波に溺れそうになるあすかの、再起の物語。


◆ 

タイトルも著者も名前はよく見かけるけれど、初読みでした。
冒頭から衝撃的な出来事があるけれど、読み進める中でにこにこにこにこ。みたいな、著者独特の表現がかわいらしくて楽しい気持ちになりつつ、日常が優しく描かれており癒されました。
失恋後の心境は大変共感するところで、浮きつ沈みつ回復していく様が愛おしくなりますね。

全体的にふわふわしていて優しいのだけれど、その中に「希望」とか「やりたいこと」といったキラキラしたものが混ざっていて、それが気持ちをまっすぐにさせました。
案外、人を殺すのは絶望で、生かすのは希望なのかもしれませんね。

そして、私もやっぱり食べものの力と、家族や友人の支えは本当に大きいなあと改めて思います。
豆はそれ程好きではないけど、今後もし青空マーケットで見かけたら買いたくなってしまいそう。

★★★☆

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「雀蜂」 貴志 祐介

あと1回刺されたら、俺は死ぬ。
雀蜂には2度と刺されてはいけない。
そんな身でありながら、目が覚めたら雪山の山荘に一人、
遠くからは不気味な羽音が聞こえる――。


冒頭のシュチュエーションに思わず身がぎゅっと縮こまるくらい、蜂をはじめとした虫が苦手です。極力近づきたくない。
とはいえ、蜂から逃げるのは主人公。半分くらいは他人事として見ていられるのでまだよいです。

本人は真剣だけど、なんだかコメディ要素も感じるような闘いっぷりです。
虫の生態とか、辞書のくだりとか、読んでいて楽しい部分もあるのですが、最後のどんでん返しも思いの他すっきりせずにするりと読み終わってしまって、少しだけ消化不良。
怖いもの見たさでついつい手にしてしまう貴志さんの本。次読む作品に期待です。

★★☆

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「NO BOOK NO LIFE 僕たちに幸せをくれた307冊の本」 雷鳥社 白井 匠

およそ1年をかけて、全国の書店員さんに直接、手紙で、FAXで聞き取った、本のプロの選んだブックリスト。

好みや目的、気分に合わせて本が選べる「本のカタログ」です。


ブックフェアの雷鳥社さんのブースで購入。
今はネットもあるし、情報は大抵手に入るから普段はあまりこういう本は購入しない。のだけど、ぱらぱらとページをめくってみたら、気になる本がいっぱいあって思わず購入。

No Book No Life というタイトルもいいし、書店員さんがテーマごとに本を選出しているのがいい。あとは、個人的には紹介されている本の表紙がイラストで描かれているのがツボで、知ってる本を見つけては「そうそう、これだよ」とより一層嬉しくなりました。

「就活に疲れて「何がしたいのかよくわからない」と悩んでいるキミに読んで欲しい本」とか、
「赤ちゃんが生まれたばかりのママに「お疲れさま」の気持ちを込めてプレゼントしたい本」とか、それぞれのテーマでベスト10が載っています。

単に「好きな本」ではなく、テーマに分かれていることで自分じゃ意識しない視点で本を見るのが楽しかったです。
偏らずにこういった本を作るのは難しいですね。けど、読みたい本にもたくさん出会えた。
いろんな人の「本がすき」という気持ちが詰まっていて、心が温かくなる1冊でした。この宝の地図を持って、今度は書店に行きたくなります。

★★★★

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■ 山から紅葉を愛でる

この秋にしたいこと4つ目、「山から紅葉を愛でる」を達成しました。

晴れた11月、登ったのは瑞牆山(みずがきやま)
秋に山登りをしたのは初めてです。

基本的に寒いのが苦手なので、山に登るなら夏、と思っていたのですが、
今回秋に山に登ってみて、あんまりにも山の色合いが美しくて、それはもう感動して帰ってきました。

足元はふかふかの落ち葉の絨毯で、木々は黄金色や赤色に色づいて、見上げれば空が青くて、
なんて美しいんだろうって、自然に心が洗われると同時に、帰り道もしばらく余韻が消えなかった程。

なんというか、最近、四季があることの尊さをよく噛み締めてます。
寒いから嫌だなあ。。ではなくて、意識を変えたらこんなにも四季を楽しめるんだなと、自然への感謝の気持ちもいっぱいです。

頂上も絶景。

岩場で、一歩間違うと落ちそうだけど、見わたす景色が本当に美しかったです。
北風が寒すぎて凍るかと思いましたが・・・。

季節のリストを達成していくことで、小さな達成感が大きな思い出になってます。
残る秋のリストは、あと1つ。

冬のリストもそろそろ作ろうと思います。

「ワンス・ア・イヤー―私はいかに傷つき、いかに戦ったか」 林 真理子

私はどれほど傷つき、戦ってきたことか。身を切るような恋の出会いと別れの日々。

23歳から36歳まで、スターの階段を駆け抜けた、ベストセラー作家の自伝的長編小説。


1年で1章。
濃い人生、書く事はたくさんあるでしょうが、長々と書いても読む方は飽きてしまう。
そこを、もう終わり?と思うくらい短く(でも、それがすごくちょうどいい)テンポ良く書き上げる力量も、
夢中になって読んでるうちは小気味いいけど、ふと我に返ると、自伝的小説なのにそんな出来事や心の内まで暴露しちゃってもいいの??と思う程の内容を書き上げる度胸も、
本当に素晴らしいと圧倒される1冊でした。
.
「野心のススメ」を先に読んでいて、次はこの本を読んでみたいと思っていたので満足、どころか、思っていた以上に読めてよかった1冊でした。
女性が社会に進出してきている今の時代だからこそ、多くはないとはいえ野心に満ちた女性の本も出てきていますが、20年以上も前にこんな本を世に出したことがすごい。

それはさておき、一人の女性の物語として読んだとき、仕事も恋も結婚も、上手くいかないことがありつつも、すべてを手に入れた作者の生き様に勇気づけられます。
勇気づけられ、強く生きられるような気がしてきます。
そしてやっぱり文才がある林さんの作品、これから他の作品を読んでいくのも楽しみです。

★★★★

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「分身」 東野 圭吾

私にそっくりな人がもう一人いる。あなたにそっくりな人がもう一人。

札幌で育った女子大生と、東京で育った女子大生…。

宿命の二人を祝福するのは誰か。追跡と逃走の遥かな旅が始まるサスペンス。


もしかしたら、世界のどこかでこんなことが起こっていたりして。
そんな想像が荒唐無稽でないような、ちょっぴり現実に近いSF要素が混ざった物語です。

母が小さい頃から娘に課した約束の意味。
大きくなるにつれて娘を遠ざけた意味。
小さな「どうして?」が蓄積していたところに、大きな事件。謎を追及していった結果、とんでもない真実に辿りつきます。

同じ姿をした二人の女性が主人公です。
互いに謎を追い求め、時に情報がクロスしながら真実が見えてくるのが爽快です。
とはいえ、見えてきた真実は決して爽快なものではありませんが。

母とは何かについて、少し考えさせられますね。
血のつながりがなくても母は母で、母を母にせしむのは子なのかもしれませんね。

ちょっと怖いけれど、先が気になる。
楽しくあっという間に読めちゃう1冊でした。

★★★★

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