「ガラスの麒麟」 加納 朋子

まだ寒い2月下旬に1件の通り魔事件があった。
襲われた17歳の女子高生安藤麻衣子は容姿端麗で成績優秀、その上経済的にも恵まれていて多くの子の憧れだった。
しかし、そんな幸せな外面とは裏腹に彼女は心に闇と孤独を抱えていた。


何の情報もなしに手にとって読んでみたものだけど、かなり掘り出し物でした。
思いがけないヒットは嬉しかったりします。
短編としてもいい物なのに、長編になって更に味が出るという素敵さ。とてもお気に入りです。

途中出てくる童話はメルヘンながらも、不安定で今にも壊れそうな心がそのまま描かれていて胸が苦しくなりました。
この童話を書いた麻衣子は一体何を思って日々を暮らしていたんだろう、そう思わずにいられないほどの深い孤独を感じました。
不幸じゃないけど幸福でもない。ただ空っぽなだけっていうその感覚は凄く共感できます。
幸福じゃない、なんて思ったら罰が当たる。
そう思いながらも自分は空っぽで紙風船みたいで、時にはどうして此処にいるんだろう、なんて思ってしまうことがあります。麻衣子や神野先生がそう思ったように。

彼女の言った「どうせ滅びちゃうんなら何のために生まれてきたんだろうね」という言葉に悲しくなりました。
ところどころのメルヘンさのせいか、一風変わった雰囲気でした。
神野先生の、ある事柄からどんどん推理をして事実に辿り着く様は非常に面白くホームズを読んでいた時のような楽しさがありました。
人物もみんな個性的で魅力的で、中でも麻衣子と神野先生は格別に好きです。

あの子が私に言ったことがあります。
『意味のない生は嫌だ。だけど、無意味な死はもっと嫌だ』って。
挑むような目をして、そんなことを言うんですよ。

★★★★★

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