「天国旅行」 三浦 しをん

現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。
すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
心中(もしくは自死)をモチーフにした短編集。


テーマは心中でありながら、主人公はみな生きる人たち。
死を身近に何を考え、何を想うのか。
死を選ぶ人たちにとって、死は救済であり、絶望的な生からの離脱であり、誰かに何かを訴える究極の手段でもある。

一方で、本書に登場する死は、餓死、焼死、溺死と壮絶なものが多いです。
「天国旅行」なんて美しいタイトルに反して、死は残酷な一面も持っている。

解説で角田さんが言っているように、小説では時に死が不必要に美化されていたりすることがあって、読み手を泣かせるためだけに描かれていることさえある。
それでも、誰にも等しく1度しかない「死」について、読みたびに涙してしまう。

本書では淡々と妻への想いを綴る「遺言」に泣かされました。
全体を通して、生と死と夢が入り混じる不思議な読了感。しをんさんの語り口がやさしくて好き。

「初盆の客」や「星くずドライブ」が切なくて好き。

引力とは振りきってはじめて、捕らわれていたと気づくものらしい。  (p68)

★★★☆

follow us in feedly

Pocket

トラックバックURL

トラックバック一覧


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。