「キノの旅―The beautiful world」 時雨沢 恵一

これは問題提起小説だったように思います。
“意思の疎通の難しさ”、”少数派意見を消してしまう多数決の危険性”、”目的達成の影で見えなくなってる現状” などを題材にした5編の短編小説からなっているんですが、全てに作者の”自分の頭で一度しっかり考えてみてほしい” といったメッセージがこめられている気がしました。
主人公であるキノはいつも、肯定するわけでもなければ否定するわけでもありません。
ただ彼女に考えがあるときはそれに沿って動くだけで。
淡々とした口調とのんびりした様子、それからエルメスとの会話のほのぼの感がたまらなく好きだったりします。

キノは、「考える」ことのきっかけをあたえてくれました。
一番考えさせられたのが「平和の国」の章でした。
“犠牲の上で成り立っている平和”についてだったんですが、これは私が今までずっと目を背けてきたことでした。
誰だって自分が大切です。
だからこそ自分を大切にする行為がたとえ、他のものを犠牲にすることに繋がってしまったとしても誰にも責めることはできないと思うんです。
だけど、本当にそれでいいんでしょうか。

この章でいえば、二つの国が和解するような方法が実際の世界でも見つけられないものか・・・答えはまだ見つかりそうにもないけど全ては考えることから始まるのだと思います。
キノシリーズはこれから先期待大です。

「ボクには『ちゃんとした大人』っていったい何なのかわからない。
いやなことができるのが『ちゃんとした大人』なのかな?
いやなことを延々と続けて、それで人生楽しいんだろうか?
それも無理やり手術でこしらえて・・・。ボクにはよくわからないね」

★★★★

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