「きよしこ」 重松 清

重く、やさしい語り口調が最初から私の心を揺さぶりました。
これは、「きよし」という少年の物語です。
吃音があって、すらすら喋れない少年のお話。

胸がざわざわするのに、じんわり温かくなって、涙が出ます。
とにかく、優しい。
悔しくて悲しくてずきずきする出来事がたくさんあるのに、それを見守る何かがとても優しい。
それは、もしかしたらタイトルにある「きよしこ」なのかもしれない。
「きよしこ」は、大人になったきよしのようでも、月の妖精のようでも、ただの夢の人物のようでもある不思議な存在。

最初に「君を励ましたり支えたりするものは、君自身の中にしかない」とあるように、何か教訓めいたことを言ったり、批判したりすることは一切ない。
それでも少年の物語を通して、はっとするような気付きが散らばっています。
中でも「伝える」ということに関しては特にたくさん。
それにしても重松さんは、悲しみや悔しさの表現がすごく上手い。
ああわかるよその感じ、としょっちゅう胸が痛みました。

個人的には、ワッチのエピソードが小さな棘のように長く痛みを残しました。
そして主人公を自分と同じ名前である「きよし」にしたところにまた、強いメッセージを感じました。
「それがほんとうに伝えたいことだったら・・・・・・伝わるよ、きっと」
最後まで泣きたくなるくらいに温かい小説でした。

<追記>
こちらのコラムで重松さんが書かれていますが、「きよし」のモデルはやはり重松さん自身みたいです。このコラム自体も「きよしこ」同様、すごく温かみのある言葉に溢れており改めて重松さんの人柄を感じられた気がします。

「誰かになにかを伝えたいときは、そのひとに抱きついてから話せばいいんだ。抱きつくのが恥ずかしかったら、手をつなぐだけでもいいから」  (p43)

「ええか。今日は一生のうちでたったいっぺんの今日なんじゃ、明日は他のいつの日とも取り換えっこのできん明日なんじゃ、大事にせえ。ほんま、大事にせえよ、いまを、ほんま、大事にしてくれや・・・・・・・」  (p149)

★★★★☆

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