江國さんの言葉はいつも濁りがなくて、景色も気持ちもすごく透明です。
それは今回のエッセイでも同じことでした。
まだ誰も吸っていない酸素に満ちている公園、とか雨が降ると窓を開けて雨を見る行為のことだとか、些細で身の回りにあるもののことでもとても新鮮に感じられます。
私は江國さんの言う、”一人でいる時のモノトーンの秩序”が好きだし、結婚に対しては淡い夢や期待なんてものも持っていない。
それでも、このエッセイを読むと結婚って案外いいかもしれない、と思ってみたりもします。
決して幸せなことばかりを書いてるわけじゃないんだけども、帰る場所があることとか、くっついて朝まで眠れることとか、結婚の幸せはそんなところにあるのかもしれない、なんて思いました。
結婚をしたらいつかは、今の「一緒にいたい、というよりも、一緒にいないともう一緒にいられない、という感じ」といった不安を感じることはなくなるのだろうか。
ここでの生活は、ほんのときどき木かげの桃のように甘い。
私たちは、もうしばらくここにとどまっていようと思う。
★★★★