「ラットマン」 道尾 秀介

結成14年のアマチュアロックバンドが練習中のスタジオで遭遇した不可解な事件。
浮かび上がるメンバーの過去と現在、そして未来。亡くすということ。失うということ。
胸に迫る鋭利なロマンティシズム。

人の顔が並んだ横にあると顔に見え、
動物が並んだ横にあるとネズミに見えるというあの有名な「ラットマン」の絵。
その原理を物語にしたのが、この作品です。

いろいろ考えながら読んだにもかかわらず、
見事に二転三転する物語に気持ちいいほどに翻弄されました。
まさか昔の事件にまであんな種明かしがあったとは。

鮮やかに伏線を回収していくのが見事で、特に後半はページを読み進める手が速くあっという間に読み終わりました。

私たちが普段見ている世界で、信じたい気持ち、認めたくない気持ちが時にフィルターになって物の見方を変える、というのはよくあることなんでしょうね。
何が真実かというのは客観的事実である一方で、実際のところ主観的な一面も持っていて、だからこそ世界の見え方は人によって違う。

軽やかなリズムで物語は進むけど、ちょっと気持ちを入れ込むと重い物語ですね。とはいえ、すっきり読めて満足です。

会わないほうがよかったのだ。見ないほうがよかった。
頭に書き込んだ記憶を、ときおり再生し、ただそれだけで満足していればよかったのだ。きっとそれが、歳月が経っても人間が幸せでいられるたった一つの方法なのだ。 (p165)

★★★★

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