「吉村昭の平家物語」 吉村 昭

平家物語は、吉田兼好によると信濃前司行長という人が書いたものだけど、実際のところは誰によって書かれたものなのかはっきりとわかっていません。
これは岩手の平泉から鹿児島県の離島までの実に広い範囲を舞台とした壮大な軍記で、実際に起こった歴史的な事件を題材としています。

平家物語がこんなにも面白いものだったなんて。
授業で「扇のまと」をやった時は、扇の舞う情景は綺麗だと思ったものの何がおもしろいのかと思ったけども、最初から読んでみるとその場面にも感慨深いものがあります。
平家物語を一言で言うのならまさに栄枯盛衰の物語。
平清盛にせよ源義仲にせよその栄えは永遠に続くものではありませんでした。
軍記だからといって単に激しい物語ではなくもっと情緒の溢れる物語でした。
戦による妻と夫の別れ、子供が父親を慕う姿などは胸が締め付けられるようでした。

私が最も好きなのは木曾義仲の最期の話です。
彼の、都へ上がった後の清盛以上に酷い態度には呆れもしたけど、彼はとても部下に恵まれていて巴御前や今井四郎の忠誠心には涙するものがありました。
読み終わった後には哀情が強く残る物語でした。

「いつもはなんとも感じぬ鎧が、いまは重くなったぞ」
義仲が、今井に声をかけた。今井の四郎は、答えた。
「お体はまだ疲れておりませんし、馬も弱ってはおりません。なぜ、鎧が重く感じるのでしょう。それは、味方がいなくなり、気が臆しているからだと思います。わたしがひとりおそばにいることは、武者千騎がいるとお考えください」

★★★★

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