「美亜へ贈る真珠」 梶尾 真治

違う時間を生きる恋人たちの心情を痛切に描いて、発表と同時にスタンダードになったと絶讃されたデビュー作「美亜へ贈る真珠」をはじめ、亡くなった男を想いつづける女心の深淵にふれる「梨湖という虚像」、夫婦のすれちがいが驚くべきできごとに発展する「玲子の箱宇宙」、時間を超越して男女が運命的なめぐりあいを果たす「時尼に関する覚え書」と、女性名をタイトルに織りこんだ、泣ける抒情ロマンスSF7篇を収録。

声が出ない。
1作目の「美亜へ贈る真珠」を読んだ時点でそういった状態でした。
泣くという段階を一気に飛び越した後で涙が出てきました。
なんだこれは。こんなすれ違いがあっていいのか。
誰の立場に立っても涙なしには読めません。加えて梶尾さんの表現の美しさにも舌を巻きます。
永遠の想いは存在するのでしょうか。

深く想っていても離ればなれになって時が経てばその想いは薄れてしまうし、振り向いてくれる可能性が皆無の人を想い続けることも難しい。
けれど愛する人が手の届きそうな位置にいるとしたら、もどかしさと共にその想いは募るばかりかもしれません。
時間という絶大な障害物に対しては言い様のない歯痒さを覚えました。
それでも梶尾さんの話はどれも最後には希望があって救われます。

特に好きなのは、違う時間の流れの中で生きる恋人を描いた「美亜へ贈る真珠」、おとぎ話のようで哀しい優しさに包まれている「ヒトはかつて尼那を」、そして自分を犠牲にしても相手を想いとおした「江里の時の時」でした。

★★★★☆

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