「海賊とよばれた男 上・下」 百田 尚樹

異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも解雇せず、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぎながら、逞しく再生していく。
20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。
その石油を武器に変えて世界と闘った男とは--出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベル。


新年早々、気持ちを奮い立たせてくれる1冊でした。
余韻がすごい。そして、これが史実に基づいていることが何よりすごい。人間の尊さや日本人としての誇りに胸が震えます。

「出光興産」の創始者、出光佐三が本書主人公のモデルです。
名前くらいしか知らなかった出光興産ですが、当時は「出勤簿なし、馘首なし、定年なし、家族も面倒見る」という、ただの理想論にも思えるものを、信念を持って有言実行した驚くべき会社でした。

人道主義と企業の利益追求は相容れないものに感じるのですが、一切の妥協をせず、結果的にはどちらも手に入れている。それは、目先の利益ではなく、10年先20年先のことに目を向ける経営感覚や、戦時中は無償で国に尽くす愛国精神に見られる世のため人のために尽くすという精神が土台にあるからでしょうね。

長いものに巻かれない、自分の正義を曲げない、なんてことをすれば、敵も多いだろうと思いきや、予想を超える敵の山。「もうダメだろう」という山場がそれはもうたくさんあるのに、その度に天の采配か全て乗り越えてきた。すべての始まりは「人」であり、窮地に陥った時に手を差し伸べてくれるのも「人」であった。
「ありえない」と思うようなことが逃げ出さずに戦い続けることで次々に達成されていく様は本当に圧巻ですね。

和を尊ぶ日本だからこそ、出る杭は打たれやすかったんでしょうね。どれほど日本のことを思っていようと、なかなか伝えるということは難しい。
それでも、明治の人らしい、さっぱりとした気骨のある人物像は会えばきっと多くの人が魅了されたんでしょうね。

堺屋さんの解説がついているのもよかったです。
本書には敵のように描かれている人たちにもそれぞれの正義があったことが添えられています。
これだけの大作を半年で書き上げた著者の百田さんですが、3ヶ月間に3回も倒れながらも没頭して書き上げた1冊ということもすごい。右とか左とかじゃなくて、日本人にこんな素晴らしい人がいたんだということを誇りに思える人でありたいと思いました。

「たとえ九十九人の馬鹿がいても、正義を貫く男がひとりいれば、けっして間違った世の中にはならない。そういう男がひとりもいなくなったときこそ、日本は終わる」  (p46)

★★★★★

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