「この女」 森 絵都

釜ヶ崎で働く青年は、とある出来事から「ある女」の人生を小説にすることを頼まれる。前金は100万円。
掴みどころのない女の人生を紐解いていくと見えてきたものは――。

3大ドヤ街の1つ、あいりん地区が舞台です。
久しぶりの森さんの小説は思いのほかすごく重くて、読了後は結構気分が落ち込みました。気持ちを入れて読みすぎた。

物語としては明るい未来を予感させる決して暗いものではないんですが、阪神大震災やとある宗教団体、何より高齢化していくドヤ街の先行きなど丁寧に取材されて描かれたリアルさが重たくて、気持ちがそちらに飛んでしまいがちでした。

とはいえ、幸せを考えられないくらいに必死に生きる人生の中で幸せに触れられた瞬間というものには涙させられるし、苦難の人生を歩んだ最期において「おのれの遺品が誰かのためになると思うたら、人間、なんぼか安心して死んでいける。どないな人生送ってきたかて、最後は人の役に立てた思うて、大手振ってあの世へ行けるんや」という言葉の真理が胸に響きました。

森さんのこんな風な、弱さと強さを併せ持つ人間の力強さみたいなものに救いを感じた1冊でした。

人間、弱みがあったかて、強いところを伸ばせばなんとかやってける。俺もそんな気がしてきたわ。  (p110)

なんかに触るときも、なんかを食べるときも、どんなときかて自分の爪は目の隅にちらちらしとるやろ。その爪が綺麗やったら嬉しいやん。指先十本分だけ毎日がキラキラするやんか。 (p271)

★★★☆

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