「ハルモニア」 篠田 節子

脳に障害をもつ由希が奏でる超人的チェロの調べ。
言葉を解せず、道徳を持たない女性にもたらされた才能は、中堅どころの音楽家によって恐るべき開花を遂げる。
しかし、難曲をこなし、自在に名演奏を再現してみせるその旋律には、自己表現が決定的に欠けていた。彼女の音に魂を吹き込もうとするチェロ奏者・東野。

<天上の音楽>にすべてを捧げる二人の前に次々と起こる超常現象と奇怪な事件。
崇高な人間愛と世俗の欲望を圧倒的筆力で描く文芸ホラー長篇。


あっという間に読ませる1冊でした。
途中、もうやめて!と何度ハラハラしたり、胸が締め付けられたりしたことか。
凡人の私にはわからない、芸術を極める者のストイックさが少しだけ怖かったです。きっと、その高みを極めようとした人にしか見えない世界があるのでしょうね。

作中でそんな世界を垣間見る度に、背中がぞわっとしました。
求めてやまない、焦がれてしかたない、そんな魅力的な何かを持つ人は、幸せなんでしょうか。
至福の一瞬はそれと引き換えに、強すぎる光となって自分の一部を確実に壊死させるようで、それが怖かったです。

篠田さんが今作で描きたかったのは、「自分より才能を持った人間を育てていかなきゃいけない悲哀、そして美の極致と大衆の要求する美のレヴェルとは著しく違っているという無残な現実」とのこと。

気付けば舞台は彼女が生きる孤高の世界で、全く違う世界に生きていると思えた彼女が身近に感じ、苦い気持ちになりながらも少し幸せな気持ちになりました。

きずなは切れてないよ。各自の心のなかに。家族がバラバラになったと嘆くよりも、過去に彼らと人生を共有できたことを感謝すべきだろう。 (p443)

★★★★

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「ハルモニア」 篠田 節子” への2件のコメント

  1. おはようございます^^
    懐かしくて思わずカキコです。
    私も読みました!でも調べたら読んだのが11年前で^^;細かくは覚えていないのですが。98年にドラマ化されていて、それがきっかけで読みました。
    読んでみたら登場人物の名前が同じというくらいしか同じじゃなかったですが…。
    読んだ当時はまだ子どもだったので^m^
    今読んだら感想や見方も変わるのかなと感想を拝見して思いました。
    (あまりにも感想や視点が違いすぎる…!)

  2. こんばんはー!
    苗坊さんも読まれてたんですね。私は古本屋さんで入手したのですが、Amazonで検索してもKindle版しかヒットしないし、随分前に刊行された小説ですよね。でも、よかった。

    そしてドラマ化してたんですね、この小説。
    苗坊さんのブログで初めて知りましたが、キンキの光一君に中谷美紀さんですか。雰囲気合う気がする…!
    本って、ほんと自分の年代によってもその時の心境によっても捉え方違うから、おもしろいですよね。私も昔読んだ本の感想とか振り返ると結構おもしろいですw

    (ちなみに関係ないんですが、今日投稿した「世界中で迷子になって」、苗坊さんのブログで見て読みたくなって買った本です!笑)

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