「大人の心に効く童話セラピー」  アランB.チネン

私たちはもう「お姫様と王子様が結ばれて、めでたしめでたし」というハッピーエンドの先にも物語があることを知っています。めでたし、めでたしで終わったその後、王子さまが禿げ、お姫さまが中年になるとどうなるのか?
家族への責任や仕事の要求を満たそうと奮闘する終わりのない日々のなか、疲れきり、とまどい、人生の途上で立ちすくんでしまうこともあるはず。そんなとき、昔話という思いがけない場所に、魔法と叡智が用意されていたのです。
30歳を過ぎるころから直面する心の危機に、おおいに役立つ16の物語。


この本は、サンフランシスコとカリフォルニアで診療するユング派精神分析医が世界中のおとぎ話を集め、成人期の心理への洞察をふくんだ物語を「中年童話」と呼びながら独自の解釈を加え紹介している1冊です。

職場の人がお勧めと貸してくれたものの、最初は翻訳が読みにくいし、思いのほか難しい…なんて思っていたのですが、気付いたら結構引き込まれていました。

著者によると「青年童話」に分類されるものや「中年童話」、それから本書ではなくもう1冊の本で取り上げられている「老年童話」というものにおとぎ話は分類されるとのこと。
それぞれの童話では、その年代にふさわしい価値観やものの見方が軸になっていて、例えば1つ引用してみると、「若者にとって死はドラマチック、英雄的、ロマンティックなものであって、彼らは愛・真実・正義のためなら喜んで死を選ぶだろう。だが、若者にとっての死はたんなる抽象概念でしかない」とある一方で、「中年になると、男も女も幻想を捨て去る。死は情け容赦のない、避け難く厳しい現実であって、もはや栄光ではなく限界になるのだ」なんていう風に書かれていて、こんな風に独自解釈でおとぎ話を紐解いていきます。

確かに、青年から中年に向かう中で、当たり前に思っていた道徳観が覆ったり、白か黒かといった極端な考えが軽減されていったり、たくさんの変化がありますよね。それに、中年になるにつれて向き合わなくてはいけない課題も危機も生じてくる。そんな時に私たちはどんな心構えをすればいいのか。
そんなことにも触れられていておもしろいです。

日本をはじめ世界中のおとぎ話を読めるのも楽しかったし、自分自身の物事に対する見え方も昔と変わっている部分がある、と自覚していただけに、より楽しめました。手帳にもメモがいっぱい。今読めてよかった。

苦痛は内省や自己改良を経て治癒にいたる。  (p275)

★★★★

follow us in feedly

Pocket

トラックバックURL

トラックバック一覧


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。