「あられもない祈り」 島本 理生

「あなた」と「私」の密室のような恋。
なかなか主人公が病んでいました。
自分で自分の首を絞めちゃうタイプの人がたくさん登場します。

はたから見ると、「何やってるんだ」ということだって、本人たちからすれば真剣なわけで。
不器用な登場人物たちの苛立ちや根拠のない恐怖の描写が的確。
鋭い言葉に、たまに古傷を刺激されました。「全部自分が悪いだなんて、全部自分が悪くないと言ってるのと同じ」とかね。
誰も彼もが単に甘えてるだけじゃん。という一言で片づけられちゃう内容かもしれないけど、正体不明の罪悪感や恐怖の大きさがとても現実味を帯びていて簡単には切り捨てられない気持ちにさせられました。
結局、誰もが弱い。弱くて脆い。
だけど、一生懸命もがいている。
「あなた」もずるいし、「私」もずるい。だけど二人の魅力もわかってるつもり。
「あなた」の「百回会ってからじゃないと、好きも嫌いも分からないような人間ではないつもりです」という言葉にときめいたり、「私」の職場の同僚が愚痴を言い合ってる時に「自分は仕事があってお金を貰えることが単純に嬉しい」と言えるところに惹かれたりもしました。

全体的に重たいですが、島本さんらしい作品な気がしました。
特に言い回しにセンスを感じたのは「お腹に石を詰め込まれた狼のような体で」というフレーズ。
島本さんの言葉選びが好きです。

「そんな浅いところで馴れ合ったり傷つけ合って、それで絶望したつもりか。君が孤独になりたいというのなら、それでもいい。ただ、そんな浅瀬で溺れたふりなんて、俺は一生認めないし、そんなことになれば、君を軽蔑する」  (p141)

★★★

follow us in feedly

Pocket

トラックバックURL

トラックバック一覧


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。