「5年目の魔女」 乃南 アサ

女はすべて魔女です。そういう素質を孕んでいます。
もっともそれを自覚しながら暮らしている人は少ないでしょうけれど。
乃南さんの名前はよく見かけたけれど、実際に読むのは初めてでした。女性の描き方がとてもリアルでぞくりとします。
とくにラストでは、じわじわと怖さが浸透してきました。

私が何よりも怖いと思ったのは、女が過去を都合のよいものにしてしまう点。
ラストの笑顔で歪んだ真実を話す貴世美も怖いし、これだけ思想場面が長かったにも関わらずあの過去を1度として思い出さなかった景子も怖いです。
過去を塗り替え真実として思い込むのも、都合の悪い過去を自分の中で抹殺してしまうのもどちらも怖い。けれど、そんな経験は女性なら誰しもあるんじゃないでしょうか。

女の勘っていうのは、男にはわからないようなものを察知します。新田に無言電話をかけていたのは誰か。
それは景子だったに違いないと私は思っています。これは確信に近いけれど、景子はずっと貴世美の仕業だと繰り返しています。
それが逆に私には怖く感じました。無言電話は2人だけがわかる合図で発した貴世美への警告に思えてなりません。
だからこそ貴世美は実家の異変の際、真っ先に景子に電話をかけたのでしょう。読後の余韻まで怖さが残る作品でした。

「1年に何人もの人と知り合うわよねえ?けれど、その中でずっと付き合っていかれるのは、多くて1人だと思うの。
そして、その中からも年と共に消えていく人がいて、結局残るのは、5年に1人か10年に1人くらいなんじゃないかしら ――。」

★★★☆

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