「花探し」 林 真理子

舞衣子は、不動産王に磨き上げられた愛人のプロ。
美しく洗練された容姿を高級ブランドに包み、ベッドではテクニックの限りをつくす。
が、最近は、新しいパトロンとの関係にも翳りが…。舞衣子は密かに決意する。
「いいわ。次の男は私が選ぶ」弁護士、名家の御曹司、流行作家―その「男」は誰か。
一流レストランで、秘密の館で、ホテルのベッドで繰り広げられる、官能と欲望の祝宴。

小説の素晴らしいところの1つは、自分の知らない世界を見せてくれるところだと思います。
本書の主人公は、プロの愛人。
お金持ちの人たちが作り出す煌びやかな世界と、自分とは全く違う価値観の人々に触れられておもしろかったです。

中村うさぎさんが素晴らしいあとがきを書かれてるんですが、私も主人公には1ミクロンも共感できずに、とはいえ、その確固たる価値観に圧倒させられました。
人の価値観は、若い頃の環境に影響される部分が多いと思いますが、若いうちから愛人として囲われている彼女の価値観が本当に独特で。

愛人とは、いわば妻のいる人とお付き合いするということですが、魅力的な男性に女性が集まるのは当然のことと言い、よくある不倫と違うのは、愛情や未来なんていう不確かなものを彼女が一切求めていないところ。
彼女は誠実さはお金として表れるものだと信じてやまない。

彼女にとっては、類まれなる「女の魅力」と引き換えに、相手がどれ程大切にしてくれるか(=お金を遣ってくれるか)が、重要なのです。
そして何がすごいって、彼女がその美貌や身体(あとは相手との駆け引きのための知略もそうですが)のみで、生活の基盤から貢物まですべてを手に入れているところ。

あとがきにも書かれていましたが、私もいつか無くなるそんなものだけで勝負をするなんて怖い、と考えてしまいがちですが、そういった若さを全力で享受するのも1つの生き方ですよね。

「週刊新潮」で連載されていたもののようですが、かなり官能的でもありました。10年後の彼女の話が読んでみたい。

そもそも金が無い男が、どうして若い女とつき合おうとするのか。
愛情などという、来月は消えるかもしれないもので釣って、妻ある男が若い女を抱こうとするのが、まず間違っているのだ。
金がこのうえない誠実なものだということを彼らは知らないのだろうか。
 (p324)

★★★☆

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