「うつくしい人」 西 加奈子

周りの眼を気にし、神経を張り詰め生きてきた三十路OL。
ある日、職場で大泣きして逃げるように退職。
発作的に旅立った離島の高級リゾートで出会った、冴えないバーテンダーと日本語を流暢に喋る外国人との交流を描く。


優しい物語を想像していたら、案外重たくて痛々しくて、最初は読んでいてしんどかったです。
無駄な自意識と自己嫌悪に苛まれる主人公の泥沼のような苦しみに、もう本を閉じて読むのを止めてしまおうかと思ったほど。
その一方で、わからないでもないなと共感する場面もありました。

他人の目を通してしか自分を評価できない自分を軽蔑しつつも、そうしてきたからこそこの社会で生きてこられたという自負を持つ主人公。
著者自身、中二状態とあとがきで述べていますが、本当にそんな感じ。
自分の価値観の鎖から解放されて初めて辿り着ける境地、心の安定を手に入れるための軌跡でもあったこの物語。

旅は人の心を少しだけやわらかくしてくれる気がします。
肩の力を抜いてみたら、見える景色も違うはず、というのをラストで感じさせてくれます。
この本を書くことを通して、西さん自身も昇華されたんですね。

吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。
何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。   (p204)

★★☆

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