「遥かなる水の音」 村山 由佳

パリで、ひとりの青年が死んだ。
最期をともに過ごした同居人は、ゲイの中年フランス人だった。
青年の遺言は、「遺灰をサハラにまく」こと。
フランス、スペイン、モロッコ―。青年の姉、友人のカップル、同居人のグループは、様々な思いを抱えたまま、遺言を叶える旅に出るが――。


<お願いがあるんだ。僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな>

そんなインパクトのある一文で始まるこの小説は、一瞬で心を異国の地に連れ去ってくれる、泣きたくなるくらい静かで孤独な、だけど人肌のようなぬくもりのあるものでした。
もともと村山さんは異国を舞台にした小説も多いですが、共通していつも遠いところに想いを馳せているようなところがありますよね。本書を読むと、旅に出たい気持ちが刺激されて、すぐにでも遠い異国の地に行きたくなります。

小説の端々から村山さん自身とても感性が鋭い人なんだろうと感じますが、きっとだからこそ生きにくい部分があったんじゃないかと思います。
そんな生きにくさと折り合いをつけながら生きてきた哲学が本書にも詰まっていて、ああやっぱり村山さんの小説が好きだと改めて感じました。

感性の鋭さといえば、いつも思うことですが、村山さんの言葉選びがすごく好きです。
例えば、お砂糖入りの濃いミントティー(モロッカン・ブランデー)について、「脳を洗い清めるかのようなあの芳香」とか、センスのある言い回しが溢れています。読めて、もうしあわせ。

男女の機微、異国の美しい景色、ハプニングありつつの濃い旅路など描かれていますが、読み終わってもどこか蜃気楼を見た後みたいな、夢のような不思議な読了感です。
それから本書で何度も登場したポール・ボウルズの作品も一度読んでみたい。読了感はとても悪そうだけれども。

「何かを強く願うとき、ただ『望む』のでは不充分だ。『信じる』のではなければね」。
HopeではなくBelive。 (p115)

★★★★☆

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1.遥かなる水の音 村山由佳

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「遥かなる水の音」 村山 由佳” への2件のコメント

  1. こんばんは^^
    この作品良いですよねー。世界観がまず好きです。
    読んでいて一緒に旅をしているようでした。
    出てくる人たちのそれぞれの周への想いが温かくて切なくて。
    周という人物が素晴らしい人だったんだなと思い、もういない人なんだと思い出してまた切なくなりました。

  2. こんにちは~。
    そうなんですよ、いいんですよー、世界観がまた(;ω;)装丁もすごく惹かれますし。
    周の人となりも感じられてよかったですよね。それに周(あまね)って名前の響きがまた好きです。
    すごく旅をしたくなって、読んだ後は飛行機のチケット代とか概算で出してみたり、旅系ブログ眺めたりしてました。休みとお金がいっぱいほしいです(´▽` )

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