「恍惚の人」  有吉 佐和子

文明の発達と医学の進歩がもたらした人口の高齢化は、やがて恐るべき老人国が出現することを予告している。
老いて永生きすることは果して幸福か?日本の老人福祉政策はこれでよいのか?
―老齢化するにつれて幼児退行現象をおこす人間の生命の不可思議を凝視し、誰もがいずれは直面しなければならない“老い”の問題に光を投げかける。
空前の大ベストセラーとなった書下ろし長編。

これが、40年以上も前に書かれた本だなんて。
名作は年月が経っても色褪せないように、時代を感じさせても古臭さを一切感じさせない1冊でした。
「愛」と同じく「老い」というのは、時代を越えて語り継がれる普遍的なテーマですよね。

中でも焦点が当てられているのは、「認知症」について。
300万人以上の認知症高齢者がいる現在、65歳以上の10人に1人は認知症だと言われています。その割合は年齢が上がるにつれ増えていき、85歳以上の4人に1人は認知症なのです。寿命が長くなればなるほど、避けては通れないのが認知症に関すること。
それを40年以上も前に取り上げ、社会に大きな影響を与えた著者の功績は大きいですよね。

とはいえ、私は最初この本に対していいイメージを抱いていませんでした。
認知症というとネガティブなイメージを抱く人が多いですが、この本こそが認知症のマイナス面ばかり取り上げ世間に広げた本、という誤った認識を持っていたのです。
衝撃的な書き出しから始まりますが、この本は真摯に老いる人、介護をする人、そしてそれらを取り巻く社会について向き合い描き出した1冊だったのです。

介護保険が始まり15年ちかく経ち、介護の社会化も随分進みました。それでも希望する人がすべて施設入所できるわけではなく、むしろ私たちは限られた財源の中、地域で包括的にケアしていく道を歩んでいくようになります。
仕事柄認知症の方と接する機会が多いですが、人はその人が生きたように老いていくのだと感じます。私もいつかは、老いてかわいいお婆ちゃんになりたい。

本書で登場するような働く嫁と介護の問題、施設入所を希望してもできない現状、徘徊への対応など課題は今もなお残されていて、超高齢社会を生きる私たちにとって、「老い」は避けて通れないものであるからにして、早いうちからしっかり向き合っていきたいものですね。
全ての人に1度は読んで欲しい1冊でした。

★★★★☆

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