「失はれた物語」 乙一

目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。
残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。
それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。

「Calling You」「失はれる物語」「傷」にはじまる、7編+αの短編集です。

不器用で人と関わることがちょっと苦手な主人公たちが織り成す物語は、なんだか根底に寂しさとか優しさがあるような気がして、読んでいて何か慰められる思いでした。

いちばんのお気に入りは、「しあわせは子猫のかたち」という短編。
誰も信じられなかった青年が、引越しと同時に幽霊と白い子猫と不思議な共同生活を送るようになったお話です。
泣きたくなるような温かい気持ちが胸に広がります。

乙一さんの本は2作しか読んだことがないんですが、ミステリー作家のイメージが強くて、「マリアの指」のようにミステリー要素が入った短編も読めるかと思えば、「ボクの賢いパンツくん」なんていうネタに全力で走ったかのようなユニークな短編も読めるし、お得に楽しめる1冊だった気がします。

著者の持つ小説の色合いがなんだか心地よかったので、また読んでみたいところ。

★★★☆

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