「家守綺譚」 梨木 香歩

100年とちょっと前、明治の頃、琵琶湖のほとりにある和風建築の屋敷に暮らす物書き・綿貫征四郎が綴る自然豊かな、摩訶不思議な、物語。
四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多。

ずっと読みたいと思って気になっていた1冊ですが、肩甲骨の間がくすぐったくなるような、切ないくらい懐かしくなるような、夢を見ているような、不思議な読み心地でした。

これは桃源郷の物語だと言われても頷けてしまうような、描かれているのはなんとも不思議な世界です。なにせ、まだ河童や鬼の存在が信じられていた頃の物語で、自然の「気」を色濃く感じます。

懐かしさを感じるのはきっと、小さい頃草木にまみれて遊んだ時と同じ自然との距離感を至るところから感じられるからかもしれないですね。小さなコミュニティで不便なことが多くても、とても豊かな世界が広がっているのがわかります。
作中の表現も普段見慣れないような美しい日本語が並んでいて、新鮮かつわくわくします。ちょうどもう少し先の季節になりますが、「新緑だ新緑だ、と、毎日贅を凝らした緑の饗宴で目の保養をしているうち、いつしか雨の季節になった」なんて表現もすごくきれい。

たまにひょいと登場する高堂と綿貫の掛け合いも好きです。親しい間柄だからこそ取り交わせる遠慮のない言葉かけが心地よくて。高堂の弱くも孤高で、誰よりも誇り高い人柄も好きだし、高堂側からの物語も読んでみたくなります。

「西の魔女が死んだ」でも感じたけれど、特定の宗教に対してではないけど自然や祖先に対する信仰心のようなものを強く感じ、そういった部分に感銘を受けたりもしました。一人旅のおともにもいい本だと思います。

私は与えられる理想より、刻苦して自力で掴む理想を求めているのだ。こういう生活は、(中略)-私の精神を養わない。  (p185)

★★★★☆

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1.『家守綺奇譚』/梨木香歩 ◎

湖で行方を断った親友の実家の管理を任された、物書きの私・綿貫征四郎。引っ越してすぐに、床の間の掛け軸の絵から親友・高堂があらわれる。高堂は、庭のサルスベリが私に懸想をし…


「家守綺譚」 梨木 香歩” への2件のコメント

  1. yocoさん、こんばんは。
    梨木さんの作品の中で、特に好きな作品です。
    脂気の抜けて、飄々とした趣のある綿貫さんが素敵ですね。
    お隣のおかみさんの、現実味があるのに綿貫さんに理解があるところ、羨ましいです。おかみさんちに下宿したい(笑)。

  2. 遅ればせながらコメントありがとうございます☆
    この作品のこの独特な風情、ものすごく魅了されますよね。
    美しい日本語と独特な世界と、もう、なんて言葉にしたらいいのかわからないんですが、私も大好きです!
    なんでも続編もあるとかで、気になります。
    おかみさんも、いい味出してますよね。笑 おかみさんなくしてこの物語は締まらない気さえw おかみさんちに下宿いいですねー!
    私はサルスベリになってみたいです。笑

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