「フリーター、家を買う。」 有川 浩

就職先を3ヵ月で辞めて以来、自堕落気儘に親の脛を齧って暮らす“甘ったれ”25歳が、母親の病を機に一念発起。
バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。本当にやりたい仕事って?
自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となったベストセラー長編小説。

ドラマ化もされてタイトルは見かけたことがあるこの小説、タイトルから夢がある明るい話なのかと思いきや、苦くて重くてやるせない展開に正直戦きました。そして、結構泣きました。
ネタばれは極力防いで書きますが、物語前半を覆っているどす黒いオーラが本当に凄まじいです。取り返しのつかないことをした、という後悔があまりに苦くて、主人公のふがいなさに共感しながら苦しくもなりました。

人って、楽な方に楽な方に流されがちだし、自分の考えが当たり前のように思ってしまいがちで、誠治のだめだめっぷりはもはや救いがないようにすら見えるけど、だからこそ直向きに変わっていく彼がかっこよくて。面倒なことを放り投げてきた彼の成長物語でもあるこの小説には、随分と勇気づけられるものがありました。

個人的には脇役ながら誠一さんのインパクトが強いです。
最初はイライラさせられっぱなしで誠治を上回るだめだめ男だと思ってましたが、そもそも完璧な人なんていないし、虚勢を張らずにはいられない弱さだとか、不器用な愛情表現とか、仕事にかけるプライドとか偽りない親心とか、読み進めているうちになんだかちょっと尊いなぁなんて思うように。きっとお母さんもそのあたりのことが全部わかっていたんでしょうね。

完全なる機能不全家族に見えたのに、それが修復されていく様も見どころです。
そして就職後の話も大好き。これぞ有川さんという読み心地で、どの登場人物も愛があるいいキャラ。ラストもラストでいいんですが、もっと先まで読んでいたいくらい。
なんなら豊川の恋愛が実る話を読んでみたい・・・!

総じてこの本は1つ1つ築いた信用が今の自分を作っていること、人は変われるということを身の丈いっぱいの心意気でもって伝えてくれる、大人に読んでほしい1冊でした。

★★★★☆

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「フリーター、家を買う。」 有川 浩” への6件のコメント

  1. こんにちは(^^)。
    WEB雑誌掲載、単行本、そしてTVドラマと、全部見てきましたが、本が一番いい…と勝手に思っております。
    ドラマの方は、姉ちゃんがちょっと違う立場だったり、お父さんの嫌な感じがクローズアップされ過ぎてたりで、映像だから仕方ないのかなぁという演出過剰な感じがちょっとあったので、とくに。
    ダメダメ男な誠治も、辛い現実に立ち向かって、少しずつ変わっていけるところが、本当に読んでて良かったです。やり直しは、きくんだな、と励まされましたね。

  2. こんにちはー!各媒体それぞれ制覇されたんですね・・・!
    映像化されるにあたって完全にそのままというよりアレンジされることが多いと思いますが、吉とでるより凶と出ることも多くて観るのは毎回勇気がいります。好きな作品であればあるほど・・・。
    お父さん確かにほんとダメダメなんですが、全部まるごと駄目ではないし、少しずつ変化していくところとか微妙な機微が描かれていないとただのムカつく親父、になってしまいそう。
    とはいえ本は、人は変われる、まだまだ間に合うっていう前向きメッセージがよかったです。

  3. こんにちは^^
    そういえばドラマ化されていましたねー。基本的に小説の映像化は苦手なので全く見ませんでした^^;3か月のドラマなので絶対に内容が変わるだろうなと思いましたし…。
    最初は読むのを止めたいと思うくらいの男性陣のダメっぷりでイライラしながらの読書でしたが^^;誠治を始め誠一も変わっていきましたし、家族の再生の様子が見事でしたよね。
    この本を読んでいた時は誠治と年齢が同じくらいで仕事を辞めたいと思い、転職しようと思っていた時期だったので自分と重ねて読んでいたなぁということも思い出しました。ありがとうございます^m^

  4. こんばんは~!
    ドラマ化されてましたねぇ!にのでしたよ、主役!(にの好き)
    映像化はどうしても内容が変わってしまって、いい方向にいけばいいのに「なにこれ全然違うじゃん!;;」と残念な気持ちになることもあって。
    あとは本と違ってある程度まとまった時間テレビの前にいなきゃいけないのが、なかなかできない。。

    それはさておき、男性陣にはなんというか、もうちょっとちゃんと周りを見てよ、頑張ってよ!!と言いたいようななんとも苦い気持ちになりましたね。女性陣は反して強くてかっこよかったですが。
    本読むタイミングによっても受け止め方が違ってほんとおもしろいですよねぇ。そして本当に余裕なくなると私本読むことすらできなくなりますw

  5. 前半は本当に暗くて重くて、読み進めるのが本当に大変でした。随分と泣いたりもしましたし。でも、後半はだんだんと誠二が変わっていく様子に声援を送りながら読めたので良かったです。

  6. こんばんはー。前半、本当に重たくて驚きましたね。
    冒頭の誠治を見てると、親のことですら面倒だ、と投げ出してしまいそうなのに、しっかりと向き合って自分を成長させていくところが、なんとも頼もしかったです。
    あー人ってこんなに変われるのか、ってくらい私も声援送りつつ勇気もらいつつ読めた気がします。うん、よかったです、ほんと。

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