「青空の卵」 坂木 司

僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。
複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。

ひきこもり探偵シリーズの第1作でもある坂木さんのデビュー作。
コンピューターのプログラマーをしている人間嫌いのひきこもり気味な人間鳥井真一と、そんな友人のために休みが多く比較的自由がきく外資系保険会社に就職した坂木司が織りなす日常ミステリーでした。

最初に思ったのは、主人公と著者の名前が同じだ!ということ。思わず道尾秀介さんを思い出しましたが、ミステリー小説ではままあることなんでしょうかね。

それはさておき、癒し系ミステリーと言ってもいいかもしれないというくらい、本書に流れる空気が優しくて、かなり情緒不安定で社会に適合できない鳥井の姿にはらはらしつつも、人の温かさに触れて安心したり、私自身癒されたりしました。

名探偵コナンは体が子どもで頭脳が大人ですが、鳥井は明晰な頭脳を持ちつつ子どもの心を一部残していて、それは純粋な心を残しているというよりも、条件が重なると言動が幼児化してしまうというような危ういもので、鳥井が持つ闇が深くていたたまれない。

ところで坂木さんの小説に登場する人たちは本当にみんな本当にキャラがいい。
この作品がシリーズものなのが嬉しいです。まだまだずっと読んでいたい。本作は短編小説の連作ですが、一番好きなのは「春の子供」。複雑な生い立ちの鳥井ですが、この章では氷が溶ける様が垣間見れて、家族っていいなぁと思わされます。

恋人でもない家族でもない、不思議な関係の鳥井と坂木ですが、二人の友情がいつまでも形を変えながらでも続いていくといいなと願わずにはいられません。
とっても美味しそうな全国の銘菓や鳥井の料理にもわくわく。続編を読むのが楽しみです。

生きていく上での幸福は、誰かとわかちあう記憶の豊かさにあると僕は思う。 (p70)

★★★★

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