「森崎書店の日々」 八木沢 里志

貴子は交際して一年の英明から、突然、他の女性と結婚すると告げられ、失意のどん底に陥る。職場恋愛であったために、会社も辞めることに。
恋人と仕事を一遍に失った貴子のところに、本の街・神保町で、古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る。
飄々とした叔父を苦手としていた貴子だったが、「店に住み込んで、仕事を手伝って欲しい」という申し出に、自然、足は神保町に向いていた。
古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。

本好きにはたまらない、神保町の古本屋を舞台に繰り広げられる1人の女性の成長物語。

ずっと気になっていたものの初めて読む作家さんでしたが、すごく読みやすくておもしろかったです。

交際して1年目になる彼から、他の女性と結婚することを告げられるという衝撃的なスタートでしたが、失意のどん底にいる貴子が少しずつ回復していくのが嬉しくて。

ほのぼのした日常の物語かと思いきや、喪失感を抱えながら生きている登場人物が多くて、胸が痛くなりつつも心に刺さる箇所がいくつもある深みのある物語でした。

著者は男性ですが、不思議なくらいに女性の心情が丁寧に描かれていて、何度も「あれ、この著者男性だよね?」と確認してしまったほど。

でてくる恋愛エピソードはどれも心惹かれるけれど、中でも幸せになって欲しいのはやっぱり桃子さんとサトル叔父さん。
これからもずっと仲睦まじくいてほしい。
続編も手元にあるので、余韻が消える頃にまた読みたいと思います。

「人を愛することを恐れないでくれ。
好きになれるうちに、いっぱい人を好きになってほしい。
たとえ、そこから悲しみが生まれようと、誰も愛さないで生きるなんてさみしいことはしないでくれ。(略)

愛することは素晴らしい。それはどうか忘れないでほしい。
人を愛した記憶というのは、絶対に心の中から消え去らない。
それは、いつまでも人の心をじんわりと温めてくれる。僕のように年をとるとね、それがわかるんだよ」
 (p237)

★★★★

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「森崎書店の日々」 八木沢 里志” への2件のコメント

  1. こんばんは^^
    古書店とその町を舞台にした素晴らしい作品でしたよね。
    私も同じく神保町って敷居が高いイメージで、東京へ行っても立ち寄ることはありませんでした。
    でも、古本まつりの風景などをテレビで見るとこの中に入りたい!と思います。神保町で古本片手にカレーを食べるのがひそかな夢です^^
    貴子が少しずつ傷を癒していく姿も良かったですが、サトル叔父さんの存在が良いですよね。そして桃子さんも。
    雰囲気に癒される作品でした^^

  2. こんばんは~!
    とてもいい舞台でしたよね、素敵な古書店で。
    私も神保町はカレー食べて帰ってきたくらいです。。。笑
    古本まつりの存在をこの本で初めて知ったのですが、ちょっとわくわくしますよね。
    読書の秋の季節に、ぜひ行ってみたいとおもいます!
    人が、癒されていく過程って、すごくいいですよねぇ。
    人が癒されるのを見るとこちらまで救われる気持ちになります。
    多感な高校生の時期とかに、サトル叔父さんのような大人が身近にいるだけで、随分と心持ちが違うんでしょうね。
    続も楽しくて仕方ないですが、ほんと雰囲気に癒されますね♪

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