「花宵道中」 宮木 あや子

どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。
あの日、あんたに逢うまでは――初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R-18文学賞受賞作。

儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たちの物語。

本書が宮木さんのデビュー作。
非常に官能的で切なく、苦しく痛いけど淡い幸せもある、精神を随分と揺さぶられる作品でした。
遊女たちの連作小説ですが、この連作具合が非常におもしろくて、思わぬ視点で物語が解き明かされて、不思議な縁によって点と点が結ばれていく様が見事でした。

この時代、遊女たちは大抵貧しくて売られてきたか、人攫いにあってきたか、その生い立ちは壮絶です。
時に諦め、時に心を殺しながらも、恋に翻弄されたり、大事な何かを守りながら生き抜いていて、読み終わった後の余韻がなかなか消えません。

艶やかな衣装や髪型、美しく官能的な遊女に心奪われながらも、叶わぬ恋に、迫り来る死にいかに向き合っていくかという彼女たちの直向きさに何より気持ちを動かされました。
私なら一体、誰のように生きただろうか、と思いを馳せずにはいられません。

どんな業か、一番悲しかったのは朝霧の章。
とはいえ、他の章も引けをとらないくらい悲しくさせてくれますが、そんな中にある淡く小さな幸せが希望の光でした。

あとがきで嶽本野ばらさんが「全ての人間は尊いという揺るぎない思い込みがなくては、このブレのないストイックな文体は生まれてこない」と書かれていますが、まさにそのとおりだなと思いました。

安達ゆみさん主演で映画化もされているようで、そちらもいつか観てみたい。しばらく余韻が消えなさそうです。

★★★★

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1.『花宵道中』/宮木あや子 ◎

『花宵道中』は、第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と読者賞を同時受賞したという、色々な意味で「水無月・Rなんかが読んじゃって良いのだろうか」という戸惑いが発生してし…


「花宵道中」 宮木 あや子” への2件のコメント

  1. yocoさん、こんにちは(^^)。
    宮木作品にはまるきっかけとなった、この作品。
    切なくて、それでいて凛とした強さを持った遊女たちのまっすぐな心意気が素晴らしかったです。
    宮木さんは色んな作風がありますが、こういう「狭い世界にとらわれてままならぬ思いを抱いて生きる」的なジャンルは、読んでいて胸がきゅーっとなって、とても好きです。

  2. こんばんは~!
    これがデビュー作ですか・・・と正直、本当にびっくりしました。
    思い出すだけで胸が締め付けられるんですが、悲しい恋の物語ながら、凛とした強さがすごくすごく格好よかったです。
    読んでいて心が随分揺さぶられるので消耗も激しいんですが、思い返すと胸がきゅーっとして。。。時間が経つほどに、これは手元に置いておきたくなる本だと改めて感じてます。ほんと、切ない。
    私は最初に読んだのが校閲ガールでとにかく明るい!というポップなものでしたが、こういうスタイルのものもいいですよね。次はどんな作品か、またまた楽しみです。

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