「続・森崎書店の日々」 八木沢 里志

本の街・神保町で近代文学を扱う古書店「森崎書店」。
叔父のサトルが経営するこの店は二年前失意に沈んでいた貴子の心を癒してくれた場所だ。
いまでは一時期出奔していた妻の桃子も店を手伝うようになり、貴子も休みの日のたび顔を見せていた。
病後の桃子を労う様子のない叔父を目にし、貴子は夫婦での温泉旅行を手配するが、戻って来てから叔父の様子はどこかおかしくて…。

読む前から予感はありましたが、胸がギュッと締め付けられる、涙なしには読めない続編でした。

古書店を舞台にしたこの作品の主人公は、本当に普通な(時には失恋をしたり、落ち込んだり、また恋をしたりする)女性で、何かドラマチックな事件が起こるわけではないです。

でも、普通に私たちが生きている中で、おいしいご飯を食べること、本を読むこと、大好きな人たちと会話をすること、そして誰もが避けて通れない大切な人を見送ることといった、日常に寄り添った出来ごとを丁寧に描いていて、それがふいにぐっと心に響くのです。

生きていてうまくいかないこともあるし、やさぐれたくなる時もあるけど、本書全体に漂う、大きな喪失体験をしたからこそわかる日常の有り難さ、尊さみたいなものに思わずはっとさせられ、日々の暮らしを大切にしようと改めて思えます。

祖母を亡くしてから特に、会いたい人にもう会えない、という、心に穴が空くような寂しさを覚えることがありますが、きっとこの先もそうした喪失体験を繰り返しながら人は生きていくんだと思います。
それでも、ちゃんといつかは前に進んでいける、という希望を本書は見せてくれました。

それから、本についての豆知識も楽しく、初めて名前を知った織田作之助の『競馬』や稲垣足穂の『一千一秒物語』など興味惹かれて、手帳にしっかり書き留めておきました。
作中では結ばれなかったけど、トモちゃんと高野くんの未来も明るい感じがして、ちょっと嬉しい。
とはいえ、一番心に残ったのは、サトルさんと桃子さんの強い絆。二人共不器用だけど、こんな風に人を想えることはすごく素敵なことだなと、思い返してもまだ胸がじんとします。

「桃子がいない間も、あの店をやっていたのはあいつが遠い空の下でも生きていてくれたからだ。あいつが疲れて傷ついたりしてどうにもならなくなったときに、戻ってこれる場所を残しておきたい、そんな気持ちがあったからだ」   (p226)

★★★★☆

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1.続・森崎書店の日々 八木沢里志

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「続・森崎書店の日々」 八木沢 里志” への2件のコメント

  1. こんばんは。
    前作も良いですが続も良かったですよね。
    とても切なかったですが・・・。
    サトルさんと桃子さんの関係はとても素敵でした。
    不器用だけどお互いを思いやっていることがとても伝わってきました。
    自分もいつかそんな人に出会えるかなーなんて思ったりして。
    もういつかとか悠長なこと言ってられない年齢になってきましたけども^^;

  2. おはようございます!
    ほんとに、不器用だけど素敵な関係ですよね。
    あんなに想い合っていてすら一緒にいられないなんて、誰もが必ず迎えるものだとわかっていますが、なんだかやるせないですが、仕方ないですよね。。
    女性は男性に比べて婚期が短いって言われるけど、子どもがほしいかどうかで変わってきたりもしますし、いろいろ考えてくと焦っちゃいますよね。
    なんていうか、誰かと一緒に生きたいな~って気持ちを持ち続けたらちゃんと出会えるような気がしますが、年齢が上がるにつれて心が頑なになる気がするのが難しいです(・ω・`

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