「群青」 宮木 あや子

ピアニストの由起子は、病気療養のために訪れた沖縄の離島で漁師の龍二に出会い、恋に落ち、やがて女の子を身篭もる。
しかし、娘・涼子を産んだ後、由起子は他界。やがて涼子は美しく成長し、島の幼馴染の漁師・一也と愛し合うようになる。
だが、一也は結婚に反対する龍二に反発。漁師のプライドを賭けて深く海に潜り、帰らぬ人に。ショックで心を病んだ涼子は、心を閉ざしてしまう…。

物語の展開がはやくて、読み終わった後はタイムトラベルをした後のような、疲労感にも似た気だるさが残りました。海に囲まれた島が舞台で、背景には常に海と闇とピアノの音色があったように思います。

登場人物の誰かに共感するというよりは、自分も幽霊のような、何か人ではないものの視点でもって物語を追っているようでした。この小説はそもそも、中川陽介監督の『群青』の脚本をもとに著者が書き下ろしたものだそうです。
映像化された作品であったからか、ところどころで目に浮かぶ海が美しかったです。とはいえ、夜の海は怖いし、海は決して美しいばかりじゃないというのもありありと見せてくれます。それは島に対しても同じで、サトウキビ畑のある島は美しいけど、どこか閉鎖的な空気感があるし、苦みが随分と含まれていたのが印象的でした。

そして、何作目かになる宮木さんの本ですが、本当に毎度ながら「こんな作品も宮木さんは書かれるのか・・・」と驚いてばかりです。艶やかさは「花宵道中」に通ずるものもありましたが、毎度違った色を見せてくれるのがおもしろいです。こんなにカラフルな作家さんも珍しいですよね。

本当に長い旅をした後のような倦怠感。最後はちょっと泣きそうになりつつも読み終わりました。雨が続く日は明るい本よりも、色で言えば青やグレーの本がしっくりくるので、読みやすかったようにも思います。

短い余生、生きていて良かったと思わせるだけの充分な幸せを、自分は与えてやれたのだろうか。  (p56)

★★★☆

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