「黄金の羅針盤」 フィリップ・プルマン

お転婆で口の達者なライラは11歳の女の子。
私たちの世界とよく似ていてまるで違うパラレルワールドでの物語です。

すべての人間の傍らにはダイモン(守護精霊)がおり、空には魔女が飛び交い、白クマは魂の鎧を着て言葉を話す。
ファンタジーの要素に、謎に立ち向かうサスペンス、パラレルワールドの秘密に迫るサイエンスフィクションなどの要素も加わった超大作。


まるで水晶の中に写る別の世界を眺めているような、不思議な感覚でした。
時代でいうと、こちらの19世紀頃でしょうか。
まだ未開の地も多く、冒険家たちに溢れている時代です。

アフリカにはゾンビを操る原住民がいるらしいし、北極には生きた人間の頭蓋骨に穴をあける民族がいるらしい。何百年も生きる魔女のいる世界では、何が起こっても不思議じゃない。
だからこそ、大きな謎に立ち向かっていくライラの様子にハラハラしっぱなしでした。残酷なシーンもちらほらあるので、余計に。

いろいろとこちらの世界と違う点はあるのですが、中でもダイモンの設定にとても惹き込まれました。
子どもの頃は自由自在に姿を変えられ、大人になるにつれて1つの形に留まるようになるダイモン。
最初はポケモンのような、ペットのようなものかな、と思っていたら大間違い。
魂のレベルで繋がっているため、引き離されると死にそうなほど辛いし、ダイモンを通じて自分を知れたり、相手との力関係を判断できたりします。

特に印象的だったのは、ライラが大人になるとダイモンの姿が固定されるのを嫌がって「あたしは、永遠に姿を変えられた方がいい」と言うのに対して、大人が「昔からずっとそうだし、何か1つの姿にさだまってほしいと思う時がいつか来る」と話す場面。
ずっと子どもでいたいと思う子ども心と、それでもいつかは大人になりたいと思う時が訪れるのを知っている大人の心境を表しているよう。
私たちの世界には存在しないのに、物語の中では確かな存在であるダイモンを通して著者はたくさんのメッセージを送ってくれていました。
ダイモンが何のメタファーであるか考えるとまた楽しいです。

3部作シリーズの1作目なので、まだまだ謎は多いですがこの先もきっとハラハラする冒険が続くことでしょう。
大人と子どもの境界線にいるライラから感じられる子どもの無鉄砲さや純粋さと、大人になることの残酷さや強さなど見るべき要素が盛りだくさんでした。
共感する点は少なくても、1つの世界を作り上げる著者の構築力には舌を巻くばかりです。

「小さいときは、ものごとが永久につづくと思うものだ。しかし、残念なことに、そうはいかない。ライラ、きみが若い女性になって、もはや子どもでなくなる日はそう遠くないんだ」  (p123)

★★★★☆

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