「やさしいため息」 青山 七恵

社会人五年目で友人なし。
恋人は三ヶ月前に出て行ったばかり。
そんな私の前に四年間行方知れずだった弟・風太がリーゼントの緑くんと共に現れた。
4年ぶりに再会した弟が綴るのは、嘘と事実が入り交じった私の観察日記。

ベストセラー『ひとり日和』で芥川賞を受賞した著者が描く、OLのやさしい孤独。
磯崎憲一郎氏との特別対談収録。

冬のひだまりみたいな、静かな物語でした。

たしかに、風来坊な弟が登場して、誰かの人生を毎日綴り続ける、なんてちょっと変わった設定はありますが、基本的には何か大きな事件が起こるわけではなく、淡々とした日常が続いていきます。

人付き合いが得意ではない主人公が、職場での人間関係にもやっとしたり、ちょっと気になる人ができたり、とにかく不器用なところに共感を覚えます。

青山さんの文章はたまにすごくリアルな質感を持っていてドキっとするのですが、気になる人にメールを送ろうか迷って迷って、えいっと送った後の記載とか、すごくわかるなー!と。

“送信ボタンを押した。
押した瞬間、電波がこの狭い浴室の壁に跳ね返って、戻ってくればいいと心から思った。
気づかないでほしい。いい返事がもらえないなら、返事もしないでほしい。“
 (p83)

本書は表題の「やさしいため息」と、「松かさ拾い」の2作からなっています。
「松かさ拾い」の方が「一人でいる」ことの輪郭が濃くて、登場人物は他にもたくさんいるのに、青山さんのこうした「一人」に焦点が当てられた作風が、疲れたときにはほっとします。

巻末は、磯崎憲一郎さんとの対談です。
お二人とも働きながら小説を執筆されてたんですよね。
読むと小説を書いてみたくなる魔力があります。笑

★★★☆

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