「向日葵の咲かない夏」 道尾 秀介

きぃ、きぃ―――。
学校を休んだS君に届け物をしに行った僕。
S君の家の軒先には鮮やかな向日葵と向き合うように、首の伸びたS君が吊るされていた。
「僕殺されたんだ」
生まれ変わったS君の言葉に、僕は犯人捜しを始めた。

読んでいて、残念なことに怖くて、気持ち悪くて仕方なかった1冊です。
登場人物の主観で描かれる物語というのは、ミステリーにはよくある手法だと思いますが、これもそうでした。
最後の最後で伏線も回収され、謎も解き明かされるので理屈としては納得できるのですが、如何せん感情の部分が理解を拒絶する感じです。

誰もが自分の物語を生きている、という主人公の主張は全くその通りで、それこそがこの本のテーマでもあると思います。
それだけならいいのですが、人の持つ狂気の部分への焦点の当て方がまた上手く、文章力のある著者だけに非常におぞましい気持ちが消えませんでした。
謎が解けてすっきりする部分もありますが、謎が解けたことにより際立つ狂気の存在の方が私にとっては大きかったです。

主人公が小学4年生ということで、それにしては大人びてるんじゃないかという意見もあると思いますが、私は絶妙な年齢設定だと思いました。
これくらの年齢が持つ残酷さがよく表れていたように思います。
それに本書を読んでいると、「物語を作る力」というはその人が持つ闇の大きさに比例するように感じ、そうだとすればこれだけの物語を作り上げたミチオ君の闇は如何程なんだろうと、また暗くなります。

事件は解決しますが私にはハッピーエンドに思えず、生き残ったのは狂気のみ、とも見えるラストには思わず唸りたいような気持ちもあります。
それでも気持ちのいいくらいに著者に翻弄されラストまで読み進めてしまったので、今度は明るめの著者の話を読んでみたいと思います。

「僕だけじゃない。誰だって、自分の物語の中にいるじゃないか。自分だけの物語の中に。その物語はいつだって、何かを隠そうとしてるし、何かを忘れようとしてるじゃないか」  (p443)

「自分がやったことを、ぜんぶそのまま受け入れて生きていける人なんていない。どこにもいない。失敗をぜんぶ後悔したり、取り返しのつかないことをぜんぶ取り返そうとしたり、そんなことやってたら生きていけっこない。だからみんな物語をつくるんだ」  (p444)

★★☆

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