「夢を与える」 綿矢 りさ

チャイルドモデルから芸能界へ駆けあがる夕子。
彼女の光と影を映し出した物語です。


装丁とタイトルから想像したものと違い、とても重たかったです。
綿矢さんの文章力によるものも大きいですが、生前から1人の女の子を追う構成が主人公への思い入れを加速させたのかも。
だから余計に、読んでいて苦しく、痛々しく、もどかしかったです。

「夢を与えるとは、他人の夢であり続けることなのだ。だから夢を与える側は夢を見てはいけない」と主人公が乾いた心で悟る場面がありますが、半分はその通りでもう半分は違うんじゃないかと思います。
夢を与えるその人自身が夢を見ることが駄目なのではないと思うのです。その夢を他人と共有することでも、夢を与えることはできるはず。ただ、それを仕事とするのであれば、それなりの節度も厳しさも必要なのでしょうね。

他には親子、夫婦、そして家族の絆も読みどころの1つでした。
少ない登場人物なのに、当たり前ながら皆まるで違って、それでいて親子はどこか似ているところがある。そんなところからも綿矢さんの描写の力を感じました。
それにしても、何やってるの!と誰に対しても叱りたくなる場面がなんと多かったことか。

「無理やり手に入れたものは、いつか離れていく。そのことは、お母さんが誰よりも知っているでしょう」  (p301)

★★☆

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