「私にふさわしいホテル」 柚木 麻子

文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの“小説家”になれる…はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。
すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社に勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典が執筆中と聞き―。

文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!

本好きにはたまらない、最高のエンタメ小説

主人公は小説家を目指す31歳の女性。ところどころ現実とリンクしていて、途中、思わずにやり・・・どころか心の中で思いっきり笑いました。

まず、これは6つの章からなる物語で、どれもこれもまるで違った味なんです。思い返してみても、ドロップ缶からドロップを出すような楽しみに溢れていて、本当におもしろかった。章ごとにきちんとひと段落つくのですが、通勤中に読んでいてあまりのおもしろさに、職場に着いてもその章を読み切るまでは自席で読み続けてしまったほど。

朝井リョウさんの「武道館」を読んだ時も、アイドルがこの本を読んだらどれほど励まされることか、と思いましたが、作家がこの本を読んだら・・・きっと笑って頷いて勇気づけられるんだろうな、なんていう風に思いました。
そして朝井リョウさんと著者の仲の良さが垣間見れて、そんなところもにやにや。朝井さんだけでなく、戦友へのエールにもなっているのが素敵ですよね。

華やかに見える作家も、よく地道で孤独な作業だ、なんていいますよね。普段は見れない舞台裏をちらりと見せてもらった気もして、そんな部分も楽しめました。
編集者たちの記述も見所です。

どうしても手に入れたいものを手に入れるために、形振り構わず貪欲に突き進む姿は、もしかしたら無様かもしれないけど、格好いいし、胸を打つ。
章を追うごとにおもしろくなって、次はどんなとっぴょうしもないことをしてくれるのかと、わくわくしっぱなしでした。

「あーおもしろかった」で終わらせない最後の章の存在が、苦味となって裏切ってくれるのがまたクセになりそうです。小説という形を取って、思い切り好きなことを詰め込んだかのような1冊は、読んでいて本当に快気でした。どの登場人物もキャラが立っていて最高。本好きな方にほど、ぜひぜひ手にとってもらいたい1冊でした。

“私は確かに高尚な人間ではないかもしれないが、努力は惜しまない。
だから、きっと欲しいものは、この先も1つ1つ確実に手にできるはずだ。 “(P199)

★★★★★

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トラックバック一覧


1.『私にふさわしいホテル』/柚木麻子 ◎

ぬははは・・・。 笑った笑った!なんとも豪快で強引で、それでいて時々どこかもの悲しさが漂うんだけど、そんなの一蹴するバイタリティ回復力がすごい(笑)。 駆け出し作家、相…


「私にふさわしいホテル」 柚木 麻子” への2件のコメント

  1. yocoさん、こんばんは(^^)。
    すっごく、面白かったですね♪
    文壇をのし上がるためには、どんな手でも使う。
    どんなにどん底に陥っても、自力で這い上がってくる。
    樹李のパワフルさ、そしてためらうことなく奇策を実行する行動力、とんでもなかったですね。
    そして、実力も兼ね備えてて。
    面白く、そしてほろ苦く読みました!

  2. 水無月さん、こんばんはー!
    もう、ものすごっく面白かったです!!
    単に離れ業なんじゃなく、しっかり実があるからこそ惹かれるし、
    あの執念は本当に凄まじいですよね。
    樹李もいいし、遠藤先輩もいいし、作中の朝井さんのキャラもいいし。笑
    単行本が出たときは見逃してましたが、文庫化されて読めてよかった1冊でした♪

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