「県庁の星」 桂 望実

主人公は胸に誇りを抱くエリート県庁職員。
班長になって2年目、初めての試みとして1年間民間企業で働くことになった。人事交流計画の一環で配属された先は田舎のスーパー。
(俺が品出しだって?冗談じゃない)
そんな県庁職員が、果たして1年間も民間でやっていけるのか?


最初は登場人物誰もかれもがあんまり好きじゃないなあという印象でした。
県庁職員は現場を見ない頭でっかちだし、スーパーの社員は無能なお気楽人間、パートは言わなくても周りに伝わるとでも思っているのか言葉足らずなことばかり。
それが、どこから好きになっていったのか気づかなかったくらい、自然に登場人物に気持ちを寄せていました。

現場レベルで何かを変えていくって、実はすごく難しいことだと思います。
だけど、その現場を知らずして何かを変えようとしても本末転倒になりやすい。
多くの分野でその微妙なバランスが求められるんですよね。

タイトルにもある「県庁の星」
主人公は最初の時点でもある意味県庁の星だったけれど、ラストでは本当に輝く星になる。その変化の過程がすごく気持ちいいです。
私自身もホームヘルパーをしてたことがあるから、学の悩みもわかるなぁと少し共感したりもしました。介護の仕事は、線引きしにくいですよね。
それに学と泰子の変化も好き。不器用親子ですよね。でもすごく優しい。
「表に出てくる感情の下に隠れている違う気持ちを捲ってみるといい」という俳句仲間のアドバイスはとても素敵で私も思わずメモを取りたくなったくらい。

主人公は変われた。周りの人たちも変わっていけた。
だけど、変われなかった同僚の県庁職員。
その人を変えるのは環境よりも、その人の持つ志なんだと思います。1度逃げると逃げ癖がつくから怖い。変われなかった同僚を見てそう思いました。
どんな場所においても、学ぶことはきっとありますよね。

「慣例、前例って言うんでしょ。能力がないからじゃないの?人を見る力がないから書類の数字を引っかき回してるんじゃないの?責任取りたくないから、前回と同じことばっかりやりたがるんでしょ。責任取ったらいいじゃない。誰の顔色も窺わずに、自分の思い通りのことをして、きっちり責任取るって格好いいじゃない。今やってることに疑問もちなさい。まずはそこから」   (P185)

★★★☆

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