「孤宿の人(上・下)」 宮部 みゆき

江戸から金毘羅山へ向かう途中にある、瀬戸内海に面した丸海藩。

金毘羅山に向かう途中に置いてきぼりにされた9歳のほう、

流されてきた江戸の罪人加賀殿の下女として働くことになったが、

まるで加賀殿の所業をなぞるかのように毒殺、病死と人が死に出した。


宮部さんの描く江戸の物語が好きです。
身分制度があって、ある程度決まった範囲で暮らす人たちの営み。
その時代に存分に思いを馳せることができました。
表紙の「上・下」のところが兎の形で、随分かわいいなと思っていたら冒頭からうさぎの話がでてきましたね。

今よりも情報入手手段も少なく、限られた範囲で暮らす人たちにとって、噂はすごい伝染力を持つんでしょうね。だからこそ、利用しようと思えば利用できることも、頼ろうと思えば頼れるところもあるんでしょう。

噂は尾びれ・背びれが付きやすいけど、それでも人から人に何かが伝わるっていいなと少し思いました。
ネットが普及してくにしたがって「face to face」って死語になりつつあるような気もします。

その人の感情が動くところ、そしてその動いた感情に対してとる行動は人それぞれですよね。
それには何を一番に守りたいかという優先順位が自分の中で働くんだろうけど、なんだか苦い思いになるものが多かったです。
きっと切腹があるようなこの時代だからこそ、守るべきものが格式や家柄、伝統になりえたんだろうな。正解があることじゃないから難しい。

だったらどう動いただろうと宇佐と一緒に考えながら読みました。
わりと淡々と物語が進んだので、まさかラストで泣くとは思いませんでしたが結構泣きました。
段々終盤になるにしたがって嫌な予感が頭をもたげ、苦い気持ちで読み進めました。わかっていても、もうそうなる以外の道はない、と知って進むのは苦しいですね。

ボタンが掛け違ってしまったかのような、些細なことがこんな大事件を巻き起こしてしまったことを思うとなんとも言えない気持ちになりますが、ほうの存在が、そしてその周りにいる人たちの優しさが救いとなりました。
不幸だけど幸福なほう。思い返してもちょっと泣けそうです。

「信じれば、嘘も真実になる。嘘を嘘と知りつつ信じたふりをするのは辛いが、本当に信じてしまえば、ずっと楽だ」  (p187)

★★★★

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