「もういちど生まれる」 朝井 リョウ

彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。
バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。
美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遙。

みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。
若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。

若者だけが知ってるあの空気感を、最高の形で再現しています

あまりにも瑞々しい感性で、20歳前後のあのひりひりした時代を書き起こしていて、胸がぎゅっと締め付けられました。

若さ特有の焦燥感だとか、自分が「何者か」であるという夢や期待、甘酸っぱい恋心、友人との距離感、何もかもが懐かしくて、輝かしく感じました。
改めて、朝井さんの感性とそれを表す絶妙な比喩表現に舌を巻きました。

「そう褒めてくれた桜の声だけが、ミルクティーの中に落とした角砂糖のように溶けて耳の中に沈殿している」

「あたしはベッドの上にとぷんと横になる。火を通す前のホットケーキ記事に放り込まれたチョコチップのように、ぬくぬくと体が埋もれていく。今日1日の疲れが体の中でじっとりと熱されて、手足の先から見えないけむりとなって蒸発していくみたいだ」

この物語はそれぞれ、登場人物が連作となって繋がっています。
西加奈子さんの解説がまた秀逸でそこに書かれている通りなのですが、ある一面ではかっこいいクールな子が、実際のところは劣等感を抱えながら生きている、とか、その描き方が絶妙で。

どの章も好きですが、ままならない恋をしているひーちゃんが登場する「ひーちゃんは線香花火」と自分が特別であるという自負と才能の限界の板挟みになりながらもがいている「破りたかったものすべて」が特に好きです。

あまりにもいい物語で、読了後もう一度最初から読んでみた。2ターン目もやっぱりよかった。
同じ時代に生きれて嬉しい作家さんです。

あのころ私たちは、他の人とは違うことを「すごい」と思っていた。絵がうまいこと、かっこよく踊れること。嫌になるような日常のくり返しの中で、非日常を見せてくれる人間のことを、「すごい」と思っていた。
勉強ができたり料理がうまかったり、同じことの繰り返しの日々の中に楽しさを見いだせたり、日常に根差している才能を「すごい」と感じられるのは、もっともっとあとのことなんだ。 (p244)

★★★★☆

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1.もういちど生まれる 朝井リョウ

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2.もういちど生まれる(朝井リョウ)

大学生5人を描いた連作短編集。


「もういちど生まれる」 朝井 リョウ” への6件のコメント

  1. yocoさん、あけましておめでとうございます!

    いつもブログ楽しく読ませて頂いています。
    今年もどうぞよろしくお願いいたしますね*^^*

    私が近頃全然本が読めていない中、
    yocoさんの読書愛溢れるブログを拝見していると
    「私ももっと読もう、頑張ろう」という気持ちになります(笑)
    どんどん読みたい本ばかりが増えていきますーー

    この「もういちど生まれる」もとても面白そう。
    引用されている文章も興味深くて、思わず手に取りたくなっちゃいます^^

    これからも沢山面白い本を紹介して下さいね、
    楽しみにしています♪

  2. nanacoさん、あけましておめでとうございます♫

    私も試験勉強しなきゃ・・・!とかやることいっぱいあるのに、いや、いっぱいあるからこそ現実逃避的に本に手が伸びてばかりで困ります。。。笑
    私は読書熱に結構波があるのか、気持ち的に読めない時期と読みたくてたまらない時期とあるのですが今はがっつり読みたくてたまらない時期のようです。あぁーーーいろいろ読みたい><

    「もういちど生まれる」は、私が今まで読んだ朝井さん作品の中で一番好きでした^^
    最初は恋愛部分の比喩表現に慣れなかったりしたんですが、これもまた爽やかな読み心地と若い時期特有の空気感が懐かしくてすごくよかったです!
    あとがきも素敵でしたし^^
    こちらこそこれからもどうぞよろしくお願いしますね♫

  3. こんばんは^^
    朝井さんの作品の中で1番なんですね~^^なのに私のブログの感想微妙ですみません^^;
    朝井さんは人の感情を書くのが上手いなぁと思います。
    今回登場する人たちの事もよく書かれているなぁと思いますし、何でこんな女性の気持ちが分かるんだろうとも思いました。
    結構前に読んだので細かいところまで覚えていなくて^^;
    引用された文章は心に沁みますね。

  4. こんばんは~^^
    いえいえいえ、全然ですよー!好みはそれぞれですし♫
    なんだか新年早々の自分のテンションとしっくり合ったのと、こういう連作系好きなのと相まって好きレベルが高くなってます。笑
    ほんと、男性が書いたとは思えないような女性の心理描写とかも絶妙で・・・日頃から本当によく人を見てるんだろうなぁと改めて感じましたね。
    そういえば苗坊さん読まれたの数年前ですよね。読み終わった後の高いテンションのまま突撃してしまった。。笑
    引用文のような、朝井さんのこういうちょっと鋭いところに、ドキっとさせられます。今後社会人として仕事をするという目線が新たに加わってどんな素敵な作品を生み出してくれるんだろうと、わくわくします。

  5. 20代のあの頃を思い出されて、懐かしいというより、私も、胸がぎゅーっと締め付けられるような、そんな作品集でした。そんな作品を書ける朝井さんも同年代の20代だなんて、本当にすごいですよねぇ~。
    これから、どんな作品を書いてくれるのか楽しみですね!

  6. すずなさん、こんばんは~^^
    ほんとぎゅーっと締め付けられましたね。思い返しても胸がぎゅっとする。
    作家さんだからきっとスランプとかもあるんでしょうけど、朝井さんの小説を読んでると、ほんとに書くことが好きなんだな~というのが端々から伝わってくる気がします。
    きっとまだまだたくさん作品を書かれるだろうから、ほんと楽しみです♪

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