「余白の愛」 小川 洋子

耳を病んだわたしの前にある日現れた速記者Y。
その特別な指にどうしても惹かれ、目を離すことができない。
記憶の世界と現実の危ういはざまを行き来する、幻想的でロマンチックな物語。

静かな、とても静かな物語で、
本の終盤に差し掛かる頃には、もっとこの静けさに浸っていたいと、読み終わるのが残念に思った程。

言葉選びが優しくて丁寧で、中でもYの話す言葉のやわらかさと、ヒロの優しい仕草に癒されました。
現実と夢のような世界を行きつ戻りつし、最後の方は何がなんだかすこし混乱してきたりもしましたが、優しく幻想的な世界はやはり魅力的です。

ところで、本書でジャスミン(おそらくナイトジャスミン)が夜8時くらいから咲き始め、甘い香りを放つという話を初めて知りました。
なんてロマンチックで素敵な植物なんでしょうね。

それにしても、とくに相手をトキめかそうとしているわけじゃないのに、読み返すときゅんとしてしまうYの台詞がまたにくい。
静かな愛もいいですね。

『大丈夫。君の声は優しいから。
全部の音が消えても、君の声は残る』  (p47)

★★★☆

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