「いちばん初めにあった海」 加納 朋子

引越しをしようと荷物を整理している時に見つけた1冊の本。

間に挟まっていた未開封の手紙には衝撃的な一言が。
「わたしもあなたと同じだから。わたしも人を殺したことがあるから」
差出人である<YUKI>は一体誰なの?


綺麗なタイトルだなって思って手にしました。
構成力は相変わらず素晴らしく、「現在」と「過去」を綺麗に織り込んで纏め上げていく手法は、さすが加納さんでした。
今回は随分と重かったような気がしますが、どろどろした感じではなく、海のような深さを持ったお話でした。

忘却は慈悲でしょう。
辛すぎる出来事は、時が傷を癒す前に人を壊します。だから、忘れられることはきっと救い。
でも、たとえ記憶は消せたとしても、どんなに思い出せなかったとしても、心にはしっかりと刻まれています。
思い出させることはとても残酷な仕打ちに思えたけれど、生きている限り進まなければならないのなら、仕方がないのかな。
正直、読み進めていくのが辛かったです。それでも最後には少しほっとしました。

言霊って、私もあると思います。
神様がいるかなんてわからないけど、人が心の底から願ったことはきっと必ず本当になるはず。
それに “誰も皆、自分の半身を探しながら生きている” というのに同意でした。
出会った期間なんて関係なしに、そんな人に出会ってしまったなら惹かれる衝動を抑えられないんでしょうね。

もし、人間が海に対して奇妙に心惹かれることがあったとしたら、その理由はただひとつしかない。
いちばん初めにあった海を、遺伝子のどこかが記憶しているから。切ないほどかすかに。それでいて、胸苦しいほど確かに。

★★★

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