「夢の守り人」 上橋 菜穂子

いとしい者を「花」の夢から助けようとして逆に花のために魂を奪われ、人鬼と化すタンダ。
命をかけてタンダを助けようとするトロガイとチャグム、そしてバルサ。
人と精霊の世界が混在する「守り人」シリーズ第3弾。


幻想的で美しい世界と、シビアな現実とをこんな風に1つの世界に描けるものなんだと、半ば呆然としました。
児童書でありながら、すごく深い。

大事なメッセージが散りばめられてます。
自分の内側に呼応して胸がぎゅっと締め付けられたかと思えば、まるで子どものように感動したり、応援したりしている。読んでいる間、自分が大人にも子どもにもなれた、本当に夢のような物語でした。

現実がどんなに辛くても厳しくても、私たちは生きていかなくてはいけない。
人にはもともと「生きたい」という強い欲求がある。
それでも、その欲求も陰るほどの辛いことがあったとして、それを忘れられる夢の世界があったとして、果たしてどれだけの人が夢の世界に居続けたいと思わずにいられるだろう。
人の力が及ばない大きな流れに対して、人はかくも無力で、それでいてかくも逞しくなれるのか。未知なる世界の不思議さに圧倒させられつつ、人が人を想う強さに誇らさを感じました。

この大きな世界を通して、「生きる」ということの意味や、その人の「役割」というものについて、考えずにはいられません。
大好きな登場人物の新しい一面を見れたことも最高の収穫でした。
そして、最後にわかる夢の守り人の意味も素晴らしい。

魅力ある人ばかりで誰もが大好きですが、中でもトロガイが大好きすぎます。
彼女の言葉は胸にすっと届く、厳しい優しさと深さがある気がします。
ずっとずっとずっと読んでいたい。

「おれにはね、人がみんな、<好きな自分>の姿を心に大事にもっているような気がする。なかなかそのとおりにはなれないし、他人にはてれくさくていえないような姿だけどね。すくなくとも、おれはその姿をもって生きてきた。
そして、どうしたらいいかわからないわかれ道にやってきたら、どっちに歩んでいくほうが<好きな自分>かを考えるんだ」
  (p176)

夢は、身にあまるほど大きな<魂>をもってしまった人間にゆるされた、たったひとつの自由に舞える空であり――のがれがたい罠でもあるのかもしれない。  (p307)

★★★★☆

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1.夢の守り人 上橋菜穂子

夢の守り人 (新潮文庫)著者:上橋 菜穂子新潮社(2007-12-21)販売元:Amazon.co.jp 人の夢を糧とする異界の“花”に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を ...


「夢の守り人」 上橋 菜穂子” への2件のコメント

  1. こんばんは。
    2作目も良かったですがこちらも良かったですね。
    タンダとバルサの絆を改めて感じました。
    もう一言で言い表すことは出来ませんし、2人は一緒に添い遂げてほしいですけどそういう関係でもないような気がして何だか表現が難しいです^^;
    チャグムに逢えたことも嬉しかったです。
    そしてトロガイ師の過去も知ることが出来ましたねー。人間らしさをとても感じて更に好きになりました^^

  2. 苗坊さん、こんばんは~♫
    いいですよね、こちらも^^ 強い絆は感じるし、バルサはすごく素敵なんだけど、なんだか色恋ごと・・・というと、うまくイメージできないというか。バルサがきゅんとしてるところとか、想像しづらい・・・!けど、女性なんだからそんな一面があってもよいと思うのですよね。と、恋愛小説好きなのですぐそんな風に思ってしまいます。笑
    チャグムも登場すると嬉しくなりますね。登場人物、ほんと魅力的ですよね・・・!久々に読みたくなりました。

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