「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」 辻村 深月

事件を起こすなら、私のほうだと思ってた。

母を殺してしまった娘と、母との確執を抱える娘。どんな母娘にも起こりうる悲劇。

地元を飛び出した娘と、残った娘。
幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。
あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。
みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。

彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。

本当は、目を背けたくなりました。

心が随分えぐられました。

女性の心の襞が痛いほどに的確に書かれていて、読み進めるにつれて辛くなってきさえしました。
知られたくないような女性のドロドロした冷たい一面、とてつもなく愚かな一面、余すことなく描かれていて、読了後まだ胸が痛い。

主人公は、偶然にも同い年の31歳でした。
だからこそ、この年代の立ち位置がリアルにわかる。

「30までにやりたいことをやって、落ち着かなきゃいけない。何でもいいから、結婚したり、結果出しておかなきゃ、笑われるし、おしまいなんだって思ってた。そのときまで何にもないままだったら恥ずかしいし、でも、逆に言えば、そこで、苦しいのもきっと終わりになるって思ってた」

というチエミの発言には、共感しかない。
ここまで素直に思えてはいなかったものの、私も30歳というのは大きな区切りだと感じていました。

女性はどうしても、比較してしまう生きものなのかもしれないですね。そして同時に、それを見せずに群れる生きもの。
冷静な眼差しで順位付けをして、打算的に計算高く生きるかと思えば、盲目なまでに恋に夢中になって他を切り捨てたり。
相反するようだけど、どちらも女性の性だと思う。

チエミは確かに、知的レベルは低いでしょう。もっといえば、チエミの両親も。
とはいえ、それは何ら悪いことではない。
私自身知的レベルが高くないからこそ、共感するところが多い。そして、そんな環境では目線の先の世界が自分の全てになりやすい。
「知らない」ということが罪になるなんて、その責任が最終的に自分にあるなんて想像もできない世界。それは、甘く優しいけど、現実を生きている人からしたら苛立ちを感じるものでしょう。

ラストは薄々、気付いてました。
だから、本当は読み進めたくない気持ちもありました。
だって、これはすごく痛い。
でも、みずほがまるで白い光のように、行を追うごとに輝きを増して救いとなってくれました。

家族間の結びつきについては、この言葉がすべてを表している気がします。

「家族だからと何かを許し、あきらめ、呑み込み、耐え、結びついた家。形は違っても、どこも皆、共通に抱える病理のような」

読み進めていて辛い部分もあったけど、最後まで読めてよかった1冊でした。

★★★★☆

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「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」 辻村 深月” への4件のコメント

  1. こんばんは^^
    辻村さんが書く学生時代の話は本当に読んでいて辛いですよね。
    私は学生の頃どこのグループにも属していなかったですし、辻村さんが書かれるような心理戦みたいなのはなかったと思うのですが^^;
    読んでいてちょっと嫌な気分になる部分もありましたねー。
    チエミは子どもでしたよね。親も中身は子どもだったんじゃないかなと思います。
    私が読んだのは20代の時でしたが、同じことを思っていました。30歳までに落ち着かなきゃいけないし、終わらせなきゃいけないって^^;でも、30歳を過ぎても落ち着いていないしまだまだもがいている最中だしやりたいこともたくさんありますし…。年齢で区切られるものじゃないですよね^^;
    読んでいて辛かったですが、読んでよかったと思う作品でした。

  2. こんにちは~^^
    ほんと、読んでて辛かったです。辻村さん、こんなに女性の心理描写がうまい方だったとは・・・。表面上は和やかだけど、実際のところは・・・なんていうのは、結構女性のあるあるかなぁなんて思いますが、そんな女性ばかりでもないですしね!
    グループに属して窮屈なよりは属さない方がよいですよねぇ。
    チエミももし違う人と出会えていたらきっといい恋愛をして、いい家庭を築けていたんだろうなぁと思うと、なんだかやるせないですよね。
    そして30歳って、何気に大きなハードルですよね。まさか簡単にその年齢を越えてしまえるとは・・・私も全然落ち着いていなくて、昔想像していた30歳とは違ってびっくりしますが、案外そんなものかもしれないですね。
    それに、やりたいことがたくさんあるのはいいですよね(*´▽`*)

    私も読んでて辛いなー痛いなーと思ったけど、やっぱり最後まで読めてよかったです。

  3. yocoさん、こんにちは!

    私は、この作品読んだ時は20代だったんですが、
    何とも耳が痛いというか、自分も抱えているモヤモヤとしたものを文章にされてしまって、何だか居心地の悪い思いをした記憶があります。笑
    そう、30歳までに結婚、出産まで一通りの事を終わらせている予定だったんですが・・・人生そう上手くはいかないもので、焦る気持ちはあるもののこのままでいいやという境地に至りました(* ̄∇ ̄*)

    辻村さんは、女同士の駆け引きやドロドロとした描写が巧いなぁと思うものの、
    やっぱり初期の頃のミステリが好きだったので、ここ最近はちょっと離れてしまっています~^^;

    ところでyocoさん31歳だったのですね、私も同じです!笑

  4. nanacoさん、こんばんは~^^
    読み心地がいい作品ではなかったものの「つまらない」というのとは違って、「あまりにリアルで聞きたくない」という種類のものだった気がします。
    ほんと30歳までに結婚して、出産して~と思っていたんですけどねぇ。
    とはいえ、30歳になるまではものすごく焦る気持ちがありましたが、越えてしまえば案外こんなものかと思いますよね。ますます焦りが大きくなるのかと思っていたので、そういう意味ではよかった気がします。

    辻村さん、そんなにたくさん作品読んでいませんが、なんとなくドロドロした描写を書く、というイメージがなかったものでびっくりしつつも、引き込まれました。
    私は逆に初期の頃のミステリをまだ読めてないので、そちらも楽しみにしてるところです。
    というか、nanacoさん同い年だったんですか・・・!私は84年生まれですが、少なくとも同年代とわかって親近感が倍増してます(*´▽`*)
    うれしいー!

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