「誰かが足りない」 宮下 奈都

予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。
10月31日午後6時に、たまたま店にいた客たちの、それぞれの物語。

認知症の症状が出始めた老婦人、
ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない青年、
人の失敗の匂いを感じてしまう女性など、6人の人生と後悔や現状の悩みを描く。
「ハライに行って、美味しいものを食べる」ことをひとつのきっかけにして、
前に進もうとする気持ちを、それぞれ丹念にすくいとっていく。

とっておきの日に、私も『ハライ』に行きたい。

読み終えた今、日曜の夜ながら心がぽかぽか温かくなりました。

“誰かが足りない”
心の拠り所のないような、淡い喪失感のような、この感覚。
普段から意識しているわけではないのに、言われてみれば既視感を覚える、この「足りない」という感じ。
1つ1つのエピソードを通して、ここにはいない誰かに思いを寄せました。

静かで淡々としたこの物語、章を追うごとに音楽が聴こえ、色や温度を感じるようになってきます。
この、物語が動き出すような感覚が絶妙で、おまけに美味しくて特別ながらも、ぽつん、と所在なく佇んでいるようだった「ハライ」が、最後はとても温かく居心地のいい場所となっているのが印象的でした。

「誰かが足りない」という、すこし淋しさを感じさせるようなこの言葉が、いくつものエピソードを下地に、最後のページで一転してこんなにも温かい意味を持つだなんて。何度も繰り返し読んじゃいました。最後のページ、だいすき。予約6のお話も。

それから「抽斗(ひきだし)」とか、「薬缶(やかん)」とか、あまり漢字で見ることのない言葉をあえて漢字で書いていたように、1つ1つの言葉が丁寧に選ばれていたのも心地よかったです。

マイナスを、マイナスと思われるものをプラスに持っていく力、というのはこんなにも心を温かくしてくれるものなんですね。

「失敗自体は病じゃないんだ。絶望さえしなければいいんだ」 (p168)

★★★★☆

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1.誰かが足りない 宮下奈都

誰かが足りない著者:宮下 奈都双葉社(2011-10-19)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る 予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。10月31日午後6時に、たまたま一緒に店にいた ...


2.誰かが足りない(宮下奈都)

良かった~。最後はジーンとした。


「誰かが足りない」 宮下 奈都” への4件のコメント

  1. こんばんは。
    この作品に登場する人たちは何かしらの事情を抱えていて、その人たちが赴くハライと言うお店。
    入るとどこか懐かしさを感じるような居心地のいいお店。
    そういうお店はなかなか巡り合うことが出来ないですよ^^;出てくる人たちが羨ましかったです。
    そんな素敵なお店の雰囲気と食事が気持ちを前向きにさせてくれた気がします。
    本当に、心が温かくなるお話でした^^

  2. 苗坊さん、こんばんは~^^
    こんなお店、そうそうないですけど、あったらすごく素敵ですよね。
    ちょっぴり特別な日に行きたくなるような地域に愛されるお店。
    お店の雰囲気もそうですし、美味しいものって心を癒しますしね。
    ここのコンソメスープは私もぜひぜひ飲んでみたい(*´▽`*)

  3. 失敗しても、また歩き出そう。大丈夫。きっとできるよ。と、優しく背中を押されるような、そんな素敵な物語でした。ジーンと沁みるお話でしたね。
    「ハライ」が実際にあったら、私も行ってみたいです。

  4. すずなさん、こんばんは~^^
    ほんとに温かい本でしたね。読み終わって優しい気持ちになりました。
    こういうぽかぽかする本って、いいですよね。
    「ハライ」は本当に行ってみたいし、私の「ハライ」を見つけられたら素敵だな~なんて思ってます。

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