「満ちたりぬ月」 林 真理子

短大時代の友人絵美子は、優しい夫と結婚し幸せな家庭生活を送っていた。
その間、圭は歯をくいしばって働いた。

そして34歳の今、家庭と共にすべてを失った絵美子の目には、圭がようやく手にしたイラストレーターとしての成功が羨ましく映り始めた。
幸福な家庭と充実したキャリア。
女の幸せはどちらにあるのかを問う意欲作。

女性は、比較する生きものなのかもしれない。

30歳を越えると、学生時代の友人でも随分境遇が変わってくる。
同じ教室で笑い合っていたのに、気付けば共通の話題が減ってきたりして。

今回登場する二人の女性は、ともに34歳。短大時代の同級生です。

片や早くに結婚し、二人の子持ち。
片やイラストレーターとして活躍する独身。
交互に描かれる二人の物語は、思わず唸りたくなるくらいにおもしろくて、苦いものがありました。

私は結婚しているわけではないし、かといってバリバリのキャリアを築いているわけではないから、どちらつかずですが、一歩違えばどちらかの人生を歩んでいたのかも、と思うくらい少しずつどちらの心境もわかる気がします。

恋に生きる主婦絵美子は、一言で言えばすべてにおいて甘い。
自己中心的で理想主義。感情に流されやすくて、視野が狭い。
年を経ても少女趣味ながら、それでいてか弱く朗らかな彼女のような女性こそ、男性に守りたいと思わせるんだろうとわかっているけど、釈然としない。
これには嫉妬も含まれているのかもしれないけど、それを認めるのも嫌だというのが苦味の要因かもしれません。

一方でがむしゃらにキャリアを築く圭は、強がりで意地っ張り。脆い部分が多分にありながら、ひたむきにそれを隠して背伸びする。
心情的にはこちらの方が共感するところは多いけれど、仕事面では結果を出せても、報われない部分が多くて切なくなります。
同い年だけど自分は夫も子どもも得ないで懸命に働いてきたという自負があるから、若い、というつもりでいたけど、実際のところは当たり前に年を重ねていて、でもそれを幸せにほのぼのと暮らしてきた(と見える)絵美子に指摘されるのは結構ショックですよね。

なんというか、女性の方が人生の振り幅は大きいですよね。
男性だってもちろんキャリアに差はあるだろうし、家庭を持つ人も持たない人もいるとはいえ、40になっても50になっても子どもを持てるけど、女性はそうじゃないからこそのんびりしてもいられないですものね。
読み物として非常におもしろいけど、他人事じゃないよなあと苦い気持ちになりました。ラストはさもありなんというラストで、苦さが一気に増しました。

★★★★

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