「一瞬の雲の切れ間に」 砂田 麻美

ある偶然が引き起こした、痛ましい死亡事故。

突然の悲劇に翻弄される人間模様を、映画『エンディングノート』『夢と狂気の王国』の監督が独自の視点から描き出した連作短編集。

不思議と、風を感じる小説でした。

交通事故で3歳の男の子が亡くなった。
その子の親、加害者、加害者の夫、加害者の夫の不倫相手…など、直接的にも間接的にも影響のあった人たちが綴る、連作短編集です。

初めて読む作家さんでしたが、読みやすい文体と、重たい内容ながら読者に詰め寄りすぎない距離感がここちよくて、確固たる現実感があるのにどこか清々しい風が吹き抜けるような1冊でした。
この距離の取り方、すごく好きかもしれない。
下手にこちらの心をかき乱すことなく、でも淡々とリアルを書き綴っていて。

夏の章、秋の章と、語る人物を変えながら時間は確かに流れていて、辛いことがあっても少しずつ前に進める人間の強さと、人間同士が互いに与える影響力の大きさがひしひしと感じられました。
まるで人生の落とし穴のように、注意していても人生の危機というのは不意に訪れるものかもしれません。
そんな時、時間の流れはもちろん、ほんの些細なことが救いになって、前に進む力をくれるんですね。

偶然図書館で見つけた1冊ですが、もう一作出ているという「音のない花火」もぜひ読んでみたい。
著者は、映画監督として数々の賞を受賞されている方のよう。作風がすごく好きなので、映画も見てみたいなぁと思わせてくれた、読めてよかった1冊でした。

★★★★☆

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