「海の見える街」 畑野智美

海の見える市立図書館で司書として働く31歳の本田。
十年間も片想いだった相手に失恋した七月、一年契約の職員の春香がやってきた。
本に興味もなく、周囲とぶつかる彼女に振り回される日々。

けれど、海の色と季節の変化とともに彼の日常も変わり始める。
注目作家が繊細な筆致で描く、大人のための恋愛小説。

あらゆる恋愛は、特別だ。

海の見える街の市立図書館で働く31歳の男性司書。
同僚で本が友達な26歳の女性司書。
そこに派遣でやってきた天真爛漫な女性と併設する児童館で働くトラウマを抱えた男性。

連作短編小説として4人の視点から描かれた1年間です。

物語の合間でちらりちらりと海が見えて、それぞれの章で愛らしい小動物が登場して、なんとも爽やかな1冊でした。
解説に「大人」であればあるほど胸に刺さる恋愛小説、とありましたが、まさにそのとおりで、いわゆる青春小説とは一味違います。

それぞれの人がトラウマや消化しきれない何かを抱えていて、それが恋をして、自分と向き合おうとして、少しずつ自分を変えていく。そんな恋の醍醐味ともいえるものが詰まったこの本には、共感するものがありました。

ところで、日野さんの章で語られていた春と秋に開かれる本の会議の話が興味深くて、私はそれほど蔵書があるわけではないけど「この本は手元に残すかどうか」と真剣に考える時間を設けてるのは本好きあるあるかもしれないなぁなんて。
彼らが働くのが図書館だからか、全体的になんだか本に対する愛情が漂ってるような気がして、読んでいて幸せでした。

最初はあまりの常識外れっぷりにドン引きしてしまった春香ちゃんですが、基本的にはいい子ですよね。
はやく松田さんも戻ってくればいいのに。
素敵な街の物語でした。

「その一人が見つかったら、大切にしなさい。自分より相手が喜ぶことを考えて大切にしなさい」 (p331)

★★★★

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1.海の見える街 畑野智美

海の見える街著者:畑野 智美講談社(2012-12-06)販売元:Amazon.co.jp この街でなら、明日が変わる。海が見える市立図書館で働く20、30代の4人の男女を、誰も書けない筆致で紡ぐ傑作連作中 ...


2.海の見える街(畑野智美)

連作中篇集。初読み作家さん。図書館を舞台にした作品と知って読んでみました。涙腺崩壊!とまではならないけれど、じんわり沁みる物語でした。


「海の見える街」 畑野智美” への6件のコメント

  1. こちらの記事にもお邪魔します♪

    あっこの作品!!!
    以前古本屋さんで単行本を見かけた時に、
    綺麗な表紙だなぁってウットリした記憶があったんです(笑)

    その時はちょっと本が傷んでいたし、
    読んだことのない作家さんだったから単行本で買う勇気もなくて^^;
    なんとなくそのまま忘れかけていた本でした。

    なんと、文庫で出ていたなんてー!
    yocoさん、嬉しい情報ありがとうございました\(^▽^)/
    感想をうかがうと、素敵なお話のようだし是非読んでみたいと思います♪

  2. こんばんは~♪

    ご存知でしたかこの本!
    私は文庫版になってから初めて知ったんですが、ものすごく綺麗な表紙ですよね。
    初めて見てからずっと気になってましたが、先日本屋さんに寄った際についつい購入してしまいました。
    表紙だけでなく、挿絵もすごく可愛いんですよー!

    海が見える街ってなんだか憧れる気持ちがありますが、全体的に海辺の街らしく軽やかな空気が流れている気がして、買ってよかった1冊でしたよ^^
    確かに初読みの作家さんって、前情報なしに買うには外れの時のダメージが大きいので慎重になりますよね。笑
    ぜひぜひ見かけたら読んでみてください♪

  3. こんばんは~^^
    私も読みました。文庫本になっているんですね。
    まず舞台が図書館と言うことに惹かれました。
    そして登場人物たちのそれぞれの不器用な感じがもどかしくてもどかしくて^^;
    でもみんな基本的に優しい良い人たちなんですよね。
    春香の最初の非常識さにはビックリでしたけど、基本的には良い子なんですよね。
    松田さんの話の最後だけちょっと納得が出来なかったのですが^^;
    素敵な物語でした。

  4. 苗坊さん、こんばんは~^^
    苗坊さんも読まれてましたか・・・!
    設定的にきっと惹かれるだろうなぁと思ってましたが既読だったとは・・!

    登場人物、みんな不器用でしたね。笑
    本田さんとかも最初は草食系な上にちょいちょいデリカシーなかったりして見ていて心配でしたが、最後はなんだか随分成長していましたよね。(と、上から目線ですが。笑)
    でもほんといい人たちばかりで。
    日野さんところの家族もすごく温かくて微笑ましかったし。
    松田さんは・・・いろいろカッコイイ部分はあるのに、ちょっと残念な部分もありつつ。。語られなかった部分が多くて若干消化不良はありますね。
    まあそれだけ衝動が大きかったということなんでしょうか・・・謎に包まれてます。
    でも全体的にはやっぱり私も素敵な物語だと思いました^^

  5. 中身も素敵なお話でしたが、確かに表紙も素敵でしたね~。
    それぞれが抱えているものは重かったですが、恋をして変わっていく姿がじわじわと沁みました。
    本の会議の話は私も興味深かったです!

  6. すずなさん、こんばんは~^^
    本の会議の話、ちょっとにまにましちゃいますよね。
    読んだ本全部手元に置いておけたらいいですが、現実的には難しいし、何を手放すかっていうのは苦渋の選択ですよね。
    ほんとに思春期に負うにしては重いできごとばかりでしたが、ちゃんと恋をして変わっていって・・・というのは微笑ましくてよかったですよね^^

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