「桐島、部活やめるってよ」 朝井 リョウ

舞台は、とある田舎の高校。
どうやら、バレー部のキャプテン桐島が部活をやめるらしい。
野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部を通し、上から下から様々な角度でリアルな高校生活を描く。
第22回小説すばる新人賞受賞

タイトルのつけ方が斬新で、気になっていた本でした。

「桐島、部活やめるってよ」
思わず、「なになに、どういうこと?(そもそも桐島って、誰よ)」と言いたくなるタイトル。
ページを捲った1行目は「え、ガチで?」でした。そう、物語は既にタイトルから始まっていたんです。
というよりも、これは、青春の一コマである高校生活をオムニバス形式でそのまま切り抜いたもの。

鋭い空気感、ちりちりした閉塞感、若さゆえの解放感などがぎゅっと濃縮されているのが高校時代。その再現があまりにもリアルで、眩しくすら感じました。
それもそのはず、著者は現役大学生です。
若々しい感性と確かな文章力が光る小説でした。

高校生活って、とても独特ですよね。
人間が階層化されているというのは、すごくわかる。多感な時期だからか、あの空間がそうさせるのか、誰もが感じていたんじゃないでしょうか。
「上のグループ」「下のグループ」
役職や勤務年数などで上下関係が決まる職場よりも、ある種シビアな世界に感じます。

オムニバス形式で主人公が変わるからこそ、上からも下からも世界が見えるのがいい。
ただし、上だ下だというのだって、狭い世界からの見方に過ぎない。物語がそこにスポットライトを当てていることが、どこか懐かしくも、嬉しくもありました。
どの人物にも感情移入しやすく、まるで高校生活を追体験したかのような気分です。

時代をうまく反映させているこの物語は、何十年もしたらきっと古くなってしまうんだろうな。だからこそ今読めてよかった。
そして桐島の存在が絶妙。彼の姿は無いのかと本を閉じてみたら、表紙で発見。この男子生徒、桐島っぽいですよね、なんとなく。
朝井さんの感情描写が好きなので、これからまた他の作品も読んでいけたらいいな。

自分が好きでやりたいことを全力でやってるときって、たぶん誰でも、こんな顔をしているのだろう。なんていうか、見ているほうが胸をつかまれるくらいひかりを放つ顔。
とっぷりと何かに濡れていた心が絞られて、蜜のようにこぼれ出た感情が血管を駆け抜けていく。 (p196)

★★★☆

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