「青い壺」 有吉佐和子

無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壷。
売られ盗まれ、十余年後に作者と再会するまでに壷が映し出した数々の人生。

定年退職後の虚無を味わう夫婦、戦前の上流社会を懐かしむ老婆、四十五年ぶりにスペインに帰郷する修道女、観察眼に自信を持つ美術評論家。
人間の有為転変を鮮やかに描いた有吉文学の傑作。

青い壺とともに眺める、人の営みのおもしろさ。

ある一人の陶芸家が生み出した美しい青磁の壺は、売られ、盗まれ、譲られながら人の手を渡り、果ては遠く異国の地へ運ばれる。
青い壺が映し出したそれぞれの人の営みが今ここに。

青い壺が誕生する瞬間の、見事なまでの美しさを目に焼き付けたところから物語ははじまり、青い壺が辿った道のりを読者は追随していくのですが、これがまたおもしろいんです。
連作短編集といっても、ある一定の範囲で主人公が入れ替わるのと違って、青い壺が受け渡されると場面はかわり、それでいて前後の繋がりはわかり、不思議な縁に導かれてそれぞれの物語を読むのがこんなにわくわくするものだとは思いませんでした。

そして、章ごとに綴られた物語がまた胸を打つんです。
どの章も甲乙つけがたいんですが、特に好きだったのが、素敵なご夫妻が戦時中にとった特別なディナーの話。
読んでいて違和感がないからつい忘れてしまいそうになるけど、この本が書かれたのも35年ちかく昔の話だから、自然と戦時中のことが身近な昔話として登場したりするんですよね。戦争を乗り越えた人たちの、芯の強さに触れて、人としての尊さとは何かを考えさせられたりもしました。

きっと骨董品などの古くから受け継がれたモノたちもまた、こんな風にたくさんの人の手を渡って、いろんな物語を見てきたんだろうと思うと、それもまたおもしろく思えます。
時代を越えていきいきと息づく物語は、今の時代にこそ読まれてしかるべきものなのかもしれないですね。

★★★★☆

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