「世界から猫が消えたなら」 川村元気

頭痛に受診をしてみたら脳腫瘍(ステージ4)が発覚。
30歳の主人公は、もう長く生きれないらしい。
そこで登場したのが、なんとも軽妙なアロハシャツの悪魔。
「この世界からひとつだけ何かを消す。その代わりにあなたは1日の命を得ることができる」と取引を持ちかけてきたが・・・

僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。

この本にはどこか、救いがある。

奇天烈な設定もおもしろいし、どこまでもノリが軽い悪魔をはじめとした文体の軽妙さが楽しいです。
一方で、話は深刻。なにせ、寿命はもうあとわずかです。

世界にはいらないものが溢れているし、どんどん消しちゃえば長生きできるじゃん!と思いきや、やはり消すものは自分で選べないらしい。「そのへんのゴミを消してよ」みたいなのじゃ、だめなんですよね。当たり前か。

電話、映画、時計・・・と次々寿命と引き換えに消されていき、思わず自分もその世界を想像してみます。
あってもなくてもいいか、と思うようなものが、実は今の自分を作り上げているのだという気付き。自由は不安を伴うという発見。それに、もしかしたら人生の終わりは、恋の終わりに似ているのかもしれない、なんて思ってもみたり。

死へ向かう物語なのに、根底には静かな愛情が漂っていて、それがきっと母親の愛情なんだと気付くのは最後のこと。それに、猫の描写がまた愛に溢れてて。フーカフーカ、伝わってくる寝息、猫と一緒に住んだことのある人ならわかるはず。

少しずつ何かが消えていく世界で、最後に残るのが愛情だといいな、と静かに思いました。

この世界にはたくさんの残酷なことがある。でもそれと同じくらい美しいものがあるんだ。 (p71)

★★★★

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