「太陽の石」 乾石智子

コンスル帝国の最北西の村に住むデイスは十六歳、村の外に捨てられていたところを拾われ、両親と姉に慈しまれて育った。
ある日父と衝突し、怒りにまかせてゴルツ山に登った彼は、土の中に半分埋まった肩留めを拾う。

〈太陽の石〉と呼ばれる鮮緑の宝石。これは自分に属するものだ、一目でデイスは悟る。
だが、それが眠れる魔道師を目覚めさせることに……。

デビュー作『夜の写本師』で読書界に旋風を起こした著者のシリーズ第3弾。

緑の美しさと、闇の恐ろしさを知る1冊です。

前巻の記憶が色濃く残っているうちに読みました。
舞台は、前巻から約840年後の世界です。
イザーカト兄弟の物語が主軸にあるのですが、今作でも遥か昔の回想シーンがあったり、他国の人が登場したり、本当にどこまでも世界が膨らみます。

魔道師といっても、時代によっても国によってもまるで違います。切り取られた箇所によってこうも違った姿を見せるのかと、まるで私たちの世界の歴史を眺めるかのような面白さです。

今回は、死を司る闇と生を司る大地(緑)とのコントラストが印象的でした。魔道師はどうしたって闇と切り離せない。そして、闇は世界から消し去ることはできない。
闇を内に抱える以上、冷酷な部分も見え隠れしますが、どんなに関係が壊れていても、兄弟の縁は切れないものですね。
憎悪の念は、飲み込まれてしまうと、その人を滅ぼすほど恐ろしいものながら、憎悪に身を燃やしている間は虚無感がなくせるなら、辛い喪失体験をした人に恨むなと言うのは酷かもしれない。それでも、その人が大切ならあえて恨まないでと言える強さがほしいです。

どこまでもファンタジーな世界ですが、まさかあんな人類の敵が登場するとは思いませんでした。
最初からそうですが、なかなか残酷でおぞましいシーンもたくさんありますよね。人が人でなくなるシーン。
この壮大な世界観、ゲームにしたらすごく面白そう。

次はどんな世界を見せてくれるんだろうと、楽しみな気持ちでいっぱいです。

憎しみは一度その味を知ってしまえば、紫芥子のごとくやめられなくなる。黄金にもなして膝の下に敷いておきたくなる。手ばなせなくなり、手ばなしてはならぬと思いこむようになる。漆黒の霧が心臓まで満ちてきても、それこそが生きがいだと。  (p246)

★★★☆

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