「カラスの親指」 道尾 秀介

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。
ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。
各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?
「ど派手なペテンを仕掛けてやろうぜ!」

あー おもしろかった!
ハラハラドキドキする場面もあったし、最後のどんでん返しにすっきりやられて、読了感も最高。

「向日葵の咲かない夏」の読了感がいまいちだったのですが、絶対にこの作者はいい作品を書く、という直観は外れていませんでした。

ミステリーやストーリーもいいんですが、作中に出てくる小ネタもいいですよね。
カラスの死に様、指の話、アルゴリズム、詐欺とマジックについてなどに、「へえ」「なるほどねえ」と楽しませてもらいました。
それにあとがきを読んで、そんなところにもアルゴリズムが?!とびっくり。
解釈の仕方で物語が広がっていくっていうのも、素敵ですね。
作者がトリックなんて1日もあれば考えられる、というのもすごい。まだまだいろんな世界を見せてくれそう。

物語では主人公が詐欺師ということもあって、騙す場面、騙される場面がたくさん出てきます。
詐欺はまるでスリルのあるゲームみたいで、小説の中だからというのもあるけれどペテンが成功すると少しわくわくしたり、「紳士の犯罪」なんて言われるとちょっと知的な感じがしたりもしたりして。
だからこそ、ある人が「詐欺師は、人間の屑です」「最低の生き物なんですよ」と言うのを聞いてハッとしました。そりゃそうですよね。

伏線もたくさんあって、読み終わってから思い返すとさらにいい。
謎が解けて終了じゃなく、人の想いに気持ちを馳せることでより深く物語を愛せます。それにしても、すっかり騙されたなあ。
あとがきを読んだら「月と蟹」も読んでみたくなったし、これから他の作品を手に取るのが楽しみです。

「誰かを殺したり自殺に追い込んだりしたら、そのそばにいる別の誰かのことも、必ず殺すことになるんです。人間は一人じゃないんですからね。一人だけを殺すことなんてできませんよ」  (p276)

★★★★☆

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