「卵の緒」 瀬尾 まいこ

僕は捨て子だ。
それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。
家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟の物語「7’s blood」も収録。


読みたかった、瀬尾さんのデビュー作。
最初からこんなにも完成度が高かったのかと、驚きました。
心の隙間に染み入るように、じんわり温かい気持ちになります。

「捨て子」「不登校」「DV」「受刑者」「親の病死」と、やはり取り扱っている内容は軽くない。
でも、その重さを感じさせないような柔らかさとひたむきさが瀬尾さんの小説にはあるような気がします。

表題作の「卵の緒」は美味しそうで、愛情いっぱいで、読んでいて本当にほんわかした気持ちになりました。
母は強い。いわゆる「常識」というものに囚われることなく、型にはまらず精一杯の愛情を持って子どもを育てることの偉大さを垣間見ました。
常識の中にいないことは、一歩間違えると後ろ指を指されたりすることかもしれないけれど、相手と向き合って愛情を注ぐことで守られるものがたくさんあるように思います。
「7’s blood」もよかった。七生の健気さに心を打たれました。

孤独を知っている人の方が、優しくなれる気がします。
血の繋がりはもちろん大きいけれど、二人を繋げたのは母の愛情だっていうことも胸にくる。
ちょうど七子たちの年齢くらいの頃、私も夜はどこまでも歩いて行けそうな気がしてた。この年齢独自の空気感がリアルに再現されているのもいい。

震災後、「絆」というものに敏感になっているせいか、この小説にある血の繋がらない絆と血の繋がりによる絆がより一層愛おしく感じました。
瀬尾さんはやっぱり、いいな。

夕暮れでも海でも山でも、とことんきれいな自然と一人じゃないって確信できるものがある時は、ひとりぼっちで歩くといいのよ。母さんの言うとおりだ。  (p47)

★★★★

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