「ミツハの一族」 乾ルカ

未練を残して死んだ者は鬼となり、井戸の水を赤く濁す。そのままでは水源は涸れ、村は滅んでしまう。
鬼となった者の未練を解消し、常世に送れるのは、“ミツハの一族”と呼ばれる不思議な一族の「烏目役」と「水守」のみ。

黒々とした烏目を持つ、北海道帝国大学医学部に通う八尾清次郎に報せが届く。
烏目役の徒兄が死んだと。墓参りのため村に赴き、初めて水守の屋敷を訪ねた清次郎は、そこで美しい少女と出会う―。

大正時代の北海道を抒情豊かに描いた、清艶なミステリ。

こうして時代は、移り変わっていくんですね。

舞台は、大正時代の北海道の開拓地。
当時は今より闇も深くて、「鬼」が出た、といわれても、そういうこともありそうだ、と思ってしまう。
きっと、独特な因習が残っている地域も実際にあったのでしょうね。

闇の中では目が見えない烏目と、
光の中では目が見えないむくろ目。

それらの目を持って生まれたがために、特別な存在である彼ら。それを、遺伝による目の病気なのでは、とますます眼科医になる意欲を高める清次郎の存在からもわかるように、時代がちょうど移り変わっていくのを肌で感じられました。
制限の多い時代から、前例に縛られることなく扉を開いて進んでいく勇気のある時代へ。

この物語のおもしろいところは、ミステリー仕立てにもなっているところ。
まずは、鬼が誰なのかを推理する。
そして、どんな未練があるのか、その未練を断ち切る方法を推理する。
死は誰にとっても平等に訪れるけれど、私は強い未練を残さずきちんと死ねるだろうか、なんて思考をふわふわ彷徨わせながら読みました。

そして、美しい水守の存在感が何よりも大きい。
知の光を手に入れたことで辛いこともあるだろうけど、それでも光を手に入れたことを幸せと想い続けてくれたらいいなと、祈るように思いました。

同じ人間だというのに、目に映るものが違う。目に映るものが違えば、別の世界に住んでいるのと同じだ。 (p132)

★★★★

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